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2011年3月

  • バカロードその23 北米大陸横断レースへの道 その4 いったりきたり記
    文=坂東良晃(タウトク編集人、1967生まれ。18〜21歳の頃、日本列島徒歩縦断、アフリカ大陸徒歩横断など約1万キロを踏破。男四十にして再びバカ道を歩む、か?)

     長く、遠くまで走りたい。だけど速くも走りたい。しかしながら速く脚を回転させ、より遠くに着地し、心拍を追い込むって作業がホトホト苦手。速いランナーは、なぜあんな優雅でゆったりしたフォームで空気を切り裂いて走れるんだろか? 須磨学園高校の西池和人、エスビー食品の竹澤健介、エチオピアのツェガェ・ケベテ。彼らの映像をコマ送りで見ると、どの瞬間を切り取っても美しい。アフリカの大地を疾駆するトムソンガゼルのように無駄な動きがない。筋肉と骨格と腱の調和がとれている。
     朝起きて、ジャージを着て、軽く流しをはじめたら、身体が空中にヒュンと浮かんで西池和人になっていた・・・という夢は何度も見るのだが、現実の朝は地球の重力に抗しがたく、キロ6分ペースですら守れない。


    【淡路国生みマラソン・ハーフ】
     10月17日。今期マラソンシーズンの開幕戦。日頃ウルトラ向けの練習ばっかしやっているので(というのは言いわけでスピード練習から逃げているだけ)短い距離を心拍マックスで走れるかどうか確認したい。10キロまでは平坦な農道で42分26秒。まぁまぁかな。そこから登り坂に突入して17キロまでひたすら登る。ラスト4キロは激しく下り、登り、再び下ってゴール。ラスト1キロを4分01秒ですっ飛ばせたので後味がよい。
     ふらふらと更衣室に向かっているとゲストランナーの高石ともやさん発見!話しかけてみると、思いがけず「トランス・アメリカ・フットレース」の思い出を堰を切ったように話していただいた。満面笑顔で怒涛の弾丸トーク。次から次へとエピソードが飛び出す。いやマジでパワフルである。高石さんは、日本フォークソング界の草分けであり、日本人として初めて1000キロ級の超ウルトラレースに参戦しはじめた人。存在自体が伝説な人物が、距離わずか50センチの位置にいて、ぼくに話しかけてくれているという事実に目まいを覚える。サインをせがむと、

     もう一歩
     もう一歩
     あたらしい 君の
     夢が かなう

         高石ともや

     と記して下さった。記録・1時間35分48秒。

    【阿波吉野川マラソン・ハーフ】
     10月24日。新たに完成した海岸道路を経由し、マリンピア沖洲の中をあっち行ったりこっち行ったりの新迷路コース。13キロあたりで道を間違え大幅にオーバーラン。Uターンして戻るの恥ずかしかった。それでもタイムはハーフの自己ベスト達成、バンザーイ!と万歳美女軍団と盛り上がっていたら、周囲のガーミン持ってる人たちが「距離が500〜600メートル短いわだ」と語り合っている。ま、そういう細かいことにこだわらないのが阿波吉野川マラソンの良いとこ。最近の市民マラソン大会みたいに洗練される必要はない。走友会のオッチャンたちが、ランシャツ・ランパン・ガニマタで全力走やってるような、昔のままの草レース的な大会であり続けてほしいと思います。記録・1時間31分28秒。

    【関西夢街道スーパーラン・320キロ】
     10月30日。ぼくが出ていいレベルの大会じゃなかった。320キロを56時間以内、不眠不休で走る。一昨年の完走者はわずか6名、完走率が10パーセント台の年もある。出場しているランナーは全国から集まった超ウルトラ、マラニック、ジャーニーランの猛者たち。ぼくなんて末席にいることも許されませぬ。
     コースの難易度は異様に高い。三度ある山岳地帯を迷わず踏破するには、レース前に何度も試走し、道を把握しておかねばならない。なんせ一般的なトレイルの大会のような分岐点の矢印や案内表示はないし、むろん誘導員もいないし。自分で山岳地図を読み、時にはヤブこぎして山道を進む。
     ぼくといえば、スタート直後の六甲山中でさっそく道を失い、崖のフチに達しては絶望し、また迷っては崖で立ちつくすの連続。最終的にはロッククライミングの練習ゲレンデを降り、1時間以上よぶんに山道を走って六甲山から脱した頃には時すでに遅し。60キロ地点の大阪城の制限時間に100%間に合わない。潰れてもいいやとガムシャラに駆けたが(USJの駅前コンコースを全力ダッシュするのは恥ずかしかった)、関門時間を30分オーバーして終了。
     ロード系超長距離走の国内最高峰レースが「さくら道国際ネイチャーラン」だとすれば、「関スパ」はロード、トレイル、地図読みの総合力を問われる日本最高峰レースだと思う。ぼくの実力じゃ当分再挑戦はおあずけですね。修行しなおします。記録・60キロでリタイア。

    【羽ノ浦マラソン・10キロ】
     11月7日。県南に伝説の「フライングロケット兄弟」がいると聞く。号砲と同時に、いや号砲の鳴るちょっと前からいささかフライング気味に100メートルスプリンターのごとく飛び出し、周囲のランナーを唖然とさせるフライングロケット兄弟(実際の兄弟ではない)。その目撃者となるべく羽ノ浦の地をめざした。
     以前から目星をつけておいたそのランナーは、やはりスタートライン上に足を添え、弾丸スタートの予感を周囲にまき散らしていた。号砲と同時に、彼はウサイン・ボルト級の爆発力で、羽ノ浦中学校の裏山に消えていった。今回はフライングなしの正々堂々スタートでちょっと物足りなかったが、県南を代表する有名ランナーの背中を一瞬かいま見られて満足。フライングロケット兄弟のTシャツがあれば入手したいな。55号バイパスを口笛を吹きながら帰った。記録・42分17秒。

    【南阿波サンマラソン・ハーフ】
     11月21日。激坂の代名詞と言えば「阿波サン」。往路の登りは真夏の犬のようにゼエゼエあえぎ、復路の激下り、特にラスト5キロは実力とはかけ離れた異次元のスピードが出せる夢のコース。
     今回は、ラスト2キロを4分10秒平均でカバーし上機嫌。しかしサブスリーランナーって最初から最後までこのペースなのか、いったいどんな心臓しとんだろ。「ちゃんと練習すればサブスリーまでは誰でもいける」と教えてくれた人もいるが、ぼくにはまずムリちゃうか、と最近思っている。ムリだと思っているうちはムリなんだろうな。記録・1時間39分40秒。

    【つくばマラソン・フル】
     11月28日。今シーズンの初フル。今までやったことない「前半自重」ってやつを試してみた。20キロまで4分40秒台で気持ちゆっくり入り、20キロ過ぎたら徐々に本気を出していく、という計画。予定どおり4分45秒平均で20キロまで刻み、さあこれからだってときに両脚に大根ぶら下げたみたいに重くなってきた。24キロからは5分台に落ちる。一度も本気出してないのになんでな!という叫びが心にエンドレス・リピートする。40キロ以降は歩きも同然。わざわざ茨城まで遠征して何やってんだ?と自分を責めても状況は変わらない。
     後半潰れるのはいつものこと。しかし、一度も全力で駆けず、攻めもせず、ずるずる自滅するなんてサイテー。参加費、遠征費をドブに捨てるようなもの。「前半自重や二度とせーへんぞー」と堅くつくば山に誓うのだった。記録・3時間33分41秒。

    【奈良マラソン・フル】
     12月5日。1週間前のつくばマラソンで不甲斐ない走りをし、その晩ヤケ酒ウォッカ70度ガブ飲みしてから呼吸器・循環器ともに不調で、歩道橋の階段を登るだけでハァハァ動悸・息切れがする。さあ走るぞ!という気分にはほど遠いまま奈良入り。どうせ走れないなら、このさい人体実験だと前夜に巨大なドラ焼き(粒あん)を5個摂取し、人智を超えた極端なカーボローディングに有効性があるかどうか試す。
     「スタート直後からブッ飛ばして、いけるトコまでいく」という方針なき方針、4分20秒台で15キロまで維持すると、その後28キロまで不思議と大崩れせず。ドラ焼き(粒あん)の一気食い、効果アリなのか?
     しかしマラソンって不思議。体調万全で臨んだつくばより、死に体の奈良で5分も速くなる。ま、このクラスのランナーなら、体調なんて神経質に気にする程のもんじゃないってことなんだろう。
     今回初開催の奈良マラソンは、前日受付しか認めない商魂溢れる大会。奈良市内のホテルの大半はツアー会社に抑えられ、シングルルームも特別料金でバカ高い。都市型マラソンはみなこんな風な運営になっちゃうんだろうかね。道路を占拠する見返りとしては仕方あるまいか。記録・3時間28分38秒。

    【防府読売マラソン・フル】
     12月19日。サブフォーレベルの市民ランナーが参加できる最高級にガチな雰囲気の大会である。スタート1時間前頃からはじまる選手のウォームアップ走のスピードに金玉縮みあがり、持ちタイム順に陸上トラックに整列するスタート方法に「競技会」の匂いを感じて、お尻のあたりがムズ痒くなる高揚を得られる。
     さてレースは、ハーフを1時間36分で通過し、「こりゃ余裕で3時間10分台出せるな〜」と余裕の金丸ダンスを辺りに見せつけていたら、34キロで失速がはじまり、最後はおなじみヘロヘロで終了。
     中3週間で3本のフルという強行軍を実施したが成果はあった。1本ごとに潰れる位置が6キロずつゴールに近づいている。ってことは、あと2本フルをこなせばゴールテープまで潰れず到達できる。何か明るい展望が開けた気分がし、帰りの新幹線でゼロじゃない方のコカコーラをちびりちびり呑りながら多幸感をむさぼる。マラソンの後に飲むコカコーラってヤバいほど精神に効きませんか? 記録・3時間25分31秒。

    【大麻町ジングルベルマラソン・10キロ】
     12月23日。標高差120メートルを一気に駆け上がり、駆け下りる。クリスマス前ってことで仮装ランナー天国のこの大会。サンタにAKBに大谷焼にといろんな仮装を楽しんでいる。「沿道の応援に背中を押してもらう」ことが仮装をする大目的のひとつだと思うが、この大会は峠道コースゆえ沿道の観客は30人おるかおらんか。仮装ランナーたちはウケを狙うわけでもなく、ただ黙々と仮装する。誰に見られようと見られまいと我は仮装するのだ、という確固たる意思が見える。
     ぼくもいつの日にか仮装をして愛想を振りまきながら走る日が来るのだろうか。ぼくにとっての仮装は、ルビコン川を渡るに等しい後戻りできない世界への一歩だ。
     そーいえば最近スポーツショップに行くと、ふつうのランニング用のシャツやショート丈のランパンがほとんど置かれていない。スピードを追求するには不向きな、ガジャガジャした装飾の服がマラソンウエアコーナーを占拠している。スポーツ用品メーカーも「スポーツ」の要素はこの際、仏壇の奧にしまいこんでおいて、i-podを収納でき、蛍光色で、フードつきのワンピースみたいな美ジョガー向けウエアの開発に勤しんでいるのだろう。どうやらマラソンは別の宇宙のスポーツになりつつある。記録・43分03秒。

    【宮古島ウルトラ遠足100キロ】
     1月15日。早朝5時スタート。道路に街灯はなく、ヘッドランプの光を頼りに走りだす。スタートからキロ4分50秒くらいで走っていると、7キロ地点で第2集団にいることがわかった。さらに200メートルほど彼方に先頭をいく2人が見える。「せっかく宮古島まで来たし、ここはひとつ先頭集団に加わってみるのはどうよ」なんて欲望に火が灯ると、いてもたってもいられなくなり、ペースをあげて9キロ地点で先頭に追いつく。
     この大会は去年も出場し、途中で道を間違えてリタイアした苦い経験がある。当大会には先導車両や誘導スタッフはいない。すべて自己責任である。去年間違えて進んだ道を横目に「ああ、この道で絶望したな。二度とあんな思いはしたくない」と口惜しさを噛みしめる。
     やがて信号のある交差点に差しかかったが、前をゆく2人が直進していく。おかしい、ここは左折すべき道だ。あわてて前のランナーを追いかけ、大声で話しかける。「さっきの交差点、左折だったはずですよ!」。だが彼は止まろうとはしない。「大丈夫ですよ。私は昨日も試走をしたんで、この道で間違いないです」。その自信満々さに気圧されぼくの記憶も不鮮明になる。(ほーか、ぼくの勘違いかもしれんな〜)と思い直す。
     だが走れど走れど道さらに暗く、幾度も現れる分岐点に看板の一つもない。先頭集団3名、ついに立ち往生し会議を始める。「もしかして道、間違えましたかね・・・」。
     コースアウトが判明した後は、本来の海沿いの道を求めて、光源ひとつない寂しいさとうきび畑をゆく。暴風吹きあれる畑道をいくら走っても正規コースに戻れない。焦りも手伝いペースが上がり呼吸が荒い。30分ほども迷走し、正規コース上にあるエイドの灯りが見えると同時に、気持ちが折れた。いまや旧・先頭集団ランナーのガーミンによれば6キロ余分に走ったとのこと。すでに最後尾に近い位置か。
     先頭集団にいるという得意満面のトランス状態から、道に迷った失望、「前について行かなきゃ今ごろ独走」という後悔。そして正規コースに戻り、ややメタボ気味のビッグヒップな奥様ランナーの後塵を拝するに至って、全身が哀しみに満ちる。
     嗚呼、そこから残り84キロの長いこと、ダメージの大きいこと。仕方ない、根性を鍛えるためにあきらめず完走しよう。この程度の苦境は、北米横断レースの際に起こる様々なトラブルに比べれば屁でもないはずだ。風速21メートル、化け物級の風圧に晒される宮古島を、寓話「北風と太陽」の旅人の挿絵のように、とぼとぼと走り続けた。記録・12時間55分。

    【愛媛マラソン・フル】
     2月6日。街のいたる所に大会の告知ポスターが貼られ、テレビやラジオでは前宣伝や特番、CMが流されている。街全体がマラソンを盛り上げよういう気運に溢れている。コースも大胆である。松山県庁のど真ん前をスタート地点にし、名物の路面電車をはじめ車両など交通を遮断して市街中心部を走らせる。ために松山市街や郊外のバイパス道沿いの応援の賑やかさはとくしまマラソンを遙かに上回っている。こんなにも地元は熱心なのに、県外から参加のランナーが5500人中わずか600人強と人気がイマイチなのはなぜだろう。徳島からも44人と少ない。丸亀国際ハーフと同日開催の影響も大きいが、大会の魅力が広く伝わっていないのが原因だろう。
     レース前の秘かな楽しみをひとつ。毎年、大街道にある三越デパート地下食品街の「hanafru」というスイーツの店で、果物が山盛りになったホールタルトを買い、まるごと1個平らげることにしている。今年は1個で足りず2個食べた。両方で3000キロカロリーくらいかな。記録・3時間24分22秒。

    【海部川風流マラソン・フル】
     2月20日。3時間20分を切るって設定タイムで走りはじめたが、最初の2キロを4分11秒、4分09秒でいってしまった。フライングロケット兄弟のマネしてどうするよ。突っこんだ代償は30キロからこんにちわとやってきて、キロ5分台に落ちこむ。そして今回も苦しさに負けて終わった。マラソンは「また今日もダメだった」の繰り返しだ。やった!とガッツポーズで終われた試しがない。これで4本続けて3時間20分台。こんな中途半端な所が上限だなんて思いたくない。もっと粘れるし、もっと耐えれるし、もっと鬼気迫れるはずなのだ。
     東京マラソンで優勝した川内優輝選手のラスト12.195キロを見せられたら、どんな言いわけも通用しない。持って生まれた才能の有無はさておき、自分の持っている力を残り1グラムもないってくらい出しきったかって点で、川内選手のようなハートで挑まないとダメだ。記録・3時間24分06秒。
  • 徳島のラーメン150軒肉玉大特集!タウトク4月号 tautoku-1104★超保存版!徳島のラーメン大大大特集★
    名店の復活、怒涛のオープンラッシュ…勢いを増す徳島のラーメン界。2010年、2011年にオープンしたばかりのお店はもちろん、昔から愛され続ける名店など150軒網羅。タウトクを携えて、ラーメン巡りへいざ出陣!
    ★海部川風流マラソン熱戦の証し★
    今年も海陽町は熱かった!ランナーにとって最高のパラダイス。走る楽しさをこんなにも味わわせてくれる大会ってあったっけ…?
  • さらら3/17号を手に、とくしまの自家焙煎珈琲店をめぐろう! salala20110317一家庭あたりのコーヒー豆消費量日本一を誇っていたこともある徳島。そんな「珈琲好き」県民に愛される、おいしい自家焙煎の珈琲店を紹介! 豆選び、マシン、煎りかた…「おいしい」といわれる一杯のためにかける、それぞれのお店の並々ならぬ情熱。こだわりが詰まったコーヒーで、ちょっと一息してみませんか。

    表紙のさらランキング! も絶好調。今回のテーマは、『春の「困った!」解決法ランキング』。
    「冬服を片付けたいのに収まらん」「炬燵ってどのタイミングでつまえたらええん?」「薄着の季節、やせたい!」などといった、暖かくなってきた今の季節ならではの、ちょっとしたお悩みを、うま〜いこと解決するアイデアをお届けします。 日々の暮らしをもっと快適にしちゃいましょう!
  • 単行本「鳴門のちゅるちゅるうどん探訪記 鳴ちゅる」のご注文は tokushima-naruchuruchuru

    麺は細くてふぞろいで、コシが一見ないようである…、
    熱いお出汁とシンプルな刻みねぎの組み合わせがたまらない、
    一度食べたら忘れらないノスタルジックなやさしい徳島のローカルうどん「鳴ちゅる」。
    そのうどんの魅力をまとめて、密かな熱いブームを巻き起こした本。
    ページをめくれば、あなたも今すぐちゅるちゅるしたくなることを保証します!



  • うららかな陽気に誘われてCU4月号発売! tokushima-CU1104■特集
    ・カフェのまるごはん
    ワンプレート、パスタ、サンド&バーガー、丼、カレーetc…。まぁるいお皿の上においしそうに盛り付けられた徳島の人気カフェのメニューが大集合。眺めているだけで心がときめく66皿が揃っています。

    ・オトメの四国10都めぐり
    車に乗って出かけたい四国の素敵な10の街をご紹介!中心街から郊外まで、かわいいファッションや雑貨、地元グルメが盛りだくさん。買い物して、食べて、うっとりして…女子の欲望全開でめぐる四国旅、してみませんか?

  • バカロードその22 北米大陸横断レースへの道 その3 続・四国横断フットレース思案
    文=坂東良晃(タウトク編集人、1967生まれ。18〜21歳の頃、日本列島徒歩縦断、アフリカ大陸徒歩横断など約1万キロを踏破。男四十にして再びバカ道を歩む、か?)

     吉野川河口から2日かけて160キロ走り高知市に着く。3日目は国道56号線を南下し79キロ先の黒潮町を目指す。早朝4時30分に高知市を発ち、15キロ走って仁淀川大橋を渡る頃に、夜明けを迎える。
     
     道幅が車道ほどもあるカラー煉瓦敷きの歩道を走る。土佐市街を迂回するバイパス道とともに敷設されたものだ。こんな人家のない場所になぜ立派な歩道が必要なのか、なんて健全納税者的な疑念がよぎる。財政破綻寸前の国と地方に無駄なもんを造りつづけるお上と民よ。あー、統一地方選なんて近づいてるけど、また税を蝕む市町会議員に県会議員どもを選挙で選ばなくちゃなんないのかね。地方議員なんてスイスやフランス、北欧みたいに無償ボランティアでいいんだ。少なくとも市民運動出身者は報酬受け取りを拒否しなくちゃいけないし、最低でも期末手当という名のボーナスなんて受け取るべきじゃない。日本じゃ地方議員に4000億円も報酬払ってる。人口3倍、国土面積24倍のアメリカ合衆国は1000億円程度なのにね。
     なんて走りながら義憤に駆られ、地域社会とか国とか人類のことを憂いだりしているが、大したことはない。その場限りの無責任思考である。ヒマに任せて、おっさんたちのサウナ談義をひとりでやってるようなもんだ。
     高知県内の街道沿いにはお弁当屋さんが多い。全国チェーン店ではなく地元の店だ。特徴的なのは店内で飲食できるシステム。売り場カウンターの手前にテーブルとイスが置かれ、早朝からお客さんが弁当を食している。
     たった今包んでもらった弁当を、その場で解いてすぐ食べるのなら、お弁当でなくてもいい気がする。だけど、のり弁280円でサクッと食事できるのは悪くない。唐揚げ弁当なんぞ、揚げたてを一瞬の間も置かず熱々を口にできるのは嬉しい。そういやあ昔、羽ノ浦にもこんなタイプのイートイン弁当屋があったっけか・・・。
     昨日までは、北米横断レースの攻略法など考えながら走っていたが、まあ実際やってみないとよくわからんよな、という結論に達してしまった。見るべき景観もない人工林の山道をひたすら走っていると、考えるべき事案も乏しくなる。
     仕方なく弁当屋のビジネスの原価計算をしたり、ビートルズのホワイト・アルバムを最初から最後まで歌おうとしてレボリューション9あたりでうんざりしたり、加速度的に膨張する宇宙空間とダークエネルギーとダークマターと量子論について持論を展開したり、金城一紀のゾンビーズ3部作をわが手で映画化するなら配役をどうすべきか悩んだりする。そのようにひたすら冗長な空想を繰り返し時間をつぶす。ヒマだ、脳がヒマだ。スティーブン・ホーキング博士のように肉体の大半が活動停止しても、思考だけは猛スピードで疾駆つづける人物はカッコいいわけだが、ぼくは対極にあるようだ。
     はたと気づく。北米横断の最大の敵はこの思考の空白地帯ではないのか。コースの大半は、赤茶けた岩石と砂漠の荒野。店も街もない無人地帯と聞く。その何もなさ加減は高知の山道の比ではない。無人のハイウェイを5000キロ、ハーレーダビッドソンで横断するのはカッコいいが、ぼくはトボトボ交互に足を前に出すだけ。脳みそはその退屈に耐えられるだろうか。
     高知市から37キロで須崎市の繁華街へ。JR土讃線の大間駅に隣接した公衆トイレ・大に入る。しゃがんで用を足す和式だが、その佇まいが尋常ではない。便器は陶器製ではなくて銀色に輝くステンレス、底部の構造は一般的なU字型とは違い、四角い箱型の武骨なもの。ホワイトベースのカタパルトにて発進準備するガンダムな気分だ。高知県に入り同様のトイレに遭遇したのは2度目。これは高知独特のトイレット文化なのだろうか。美術館の展示スペースのようなステンレスの箱にウンチをポロリ落とすと、わが排泄物が文化財のような威厳を放って見えた。
     須崎市の道の駅「かわうその里すさき」でひと休みし、坂道をぐんぐん登れば碧い太平洋を眼下にする。土佐久礼から6キロ続く急勾配の七子坂を標高300メートルぶん登り、七子峠の頂上へ。四万十町と名称を変えた旧窪川市街で日が暮れる。
     66キロ走り、今宵の宿泊所「佐賀温泉・こぶしのさと」まで残り13キロ。夕食のラストオーダーの時間が迫っている。キロ6分ペースで走ってギリ間にあう。ヘアピンカーブが連続する街灯のない真っ暗な峠道を、呼吸は限界アヘアヘ、アゴの先から汗をだくだく滴らせて急ぐ。脚を使いすぎて、明日にダメージを残さないか心配。しかし夜中にさ、いったい何やってんだろね。
     夜8時すぎに宿に到着。元々温泉のあったこの地に昨年オープンしたばかりの「こぶしのさと」は和洋折衷のモダンな建築とインテリアが冴えている。汗まみれの衣類を洗濯機に放り込み、熱い天然温泉が満たされた浴槽にダイブし、頭まで浸かること所要3分。風呂上がりの余韻を愉しむ暇もなく、びしょ濡れ厭わずレストランにダッシュ。
     広々したレストランに客はぼく1人。遅くなったことを詫びるとスタッフの方々は嫌な顔ひとつせず「ごゆっくりお召し上がりください」と微笑む。そんな優しさに甘えてはならんと、一刻も早く食事を終えるべく、脱兎の如く口中に料理を詰め込み咀嚼。喉につかえてむせ返り、ごはん粒を空に飛ばす。山宿ながら地魚の造りは新鮮そのもの、揚げたてのサクサク天麩羅が胃に沁みる。ぼくの到着を待って調理してくれたのだ。
     食後に改めて露天風呂やサウナのある温泉へ。広い浴場を1人で独占する愉悦に意識が遠のく。1泊夕食付き8000円、この旅いちばんの贅沢宿であったが値段以上の価値あり。ふかふか布団と木の香りに包まれた部屋でいつまでも惰眠を貪れたら幸せなのだが、朝4時に出発しなけりゃならないのが悲しい。
        □
     午前4時、行動再開。超長距離ランニング中は2時間も眠ればスッキリするのが不思議だ。これ以上眠るとダメージで起き上がれなくなるって防衛本能から目が覚めるんだと思う。
     気温はマイナス2度、吐く息が産業革命の工場の煙みたいにもうもうと白くたなびく。天気予報は朝から雪だ。足摺岬は80キロ先、雪に閉じこめられないよう先を急ぎたい。
     夜が明けると、リアス式海岸っぽい岬と入り江が連なる。太平洋に張りだした岬の尾根をダラダラと登り、漁村のある入り江に向かって下る。登り下りが、壊れ気味の脚に響く。カラ元気を出すため山本コウタローの「岬めぐり」を口ずさむが、歌声は寒空に虚しく消えていく。
     土佐湾のはるか彼方に足摺岬がうっすらと霞んで見える。50キロ向こうの岬は、切り立った断崖を見せ、行く手の険しさを暗示する。
     やがてミゾレまじりの氷雨がパラパラ音を立てはじめ、一向に止む気配をみせない。防水ジャケットを着ているが、いつしかぐっしょりと氷水が浸透し、身体の芯まで冷やす。気温の寒さには精神的な戦いを挑めるが、重く濡れた衣類の不快感は気分をどんより曇らせる。いよいよ旅人に鞭打つようなヒョウ雨になり、たまらず「道の駅ビオスおおがた」にエスケープする。
     入口脇の物産スペースに、地元の仕出し屋で作られたと覚しきお弁当が並んでいる。美味しそうだ・・・たまらずひとつ購入する。館内にストーブの効いた食堂があるので、女性の店員さんに「ここで弁当を食べていいですか?」と尋ねると、あっさり「ダメです」と拒絶され、「隣の公園管理事務所で食べられます」と指示される。ところが公園管理事務所に行ってみるとドアに鍵がかかっていて中に入れない。年末年始の休館日なのだ。結局どの建物にも入ることができず、雨と風の吹きさらしの中で弁当を食べる。しまった、高知名物のイートイン弁当屋で食うべきだった、と後悔する。身体が冷え切ってガチガチと歯の奧が鳴る。
     四万十川の東岸、堤防上の道路を進めばさえぎる物もなく、雪は横殴りに。地面についた雪は溶けることなく、シャーベット状に一面を凍らせる。今履いているランニングシューズは最新版だけあって底に通気用の穴が開いているのだが、そこから氷水が侵入し、足の裏全体をびしょ濡れにする。シューズの足先は編み目の粗い軽量モデル。風が吹きつけるたびに足先を空気が抜け、体感温度を下げる。やがて指先がじわじわ麻痺し、土踏まずから前半分の感覚がなくなる。次には火傷のような痛みに襲われる。こんな平地でまさか凍傷になるはずもないだろうけど。
     四万十川河口を離れ山道に入る。ときおり小さな集落が現れるが、人の気配はなくゴーストタウンのよう。むろん店や自動販売機もなく、暖をとる場所はない。アイスシャーベットの道を足首まで浸かりながら走る。右脚のスネがひどく腫れている。左のヒザは関節にガリガリこすれる嫌な違和感がある。いよいよ雪強く、気持ちも折れて、小さなお堂の軒先で雨宿りし、無益に時間を潰す。くつ下を脱ぐと、両方の足裏は象の足のように肥大化し、痛みを通り越して感覚もない。残り20キロほどを残し日が沈んでいく。
     歩けるが走れない。情けないがもう走れない。 時速4キロで歩き続ければ5時間で足摺岬の先端まで行ける。しかし、歩いてゴールするんじゃ意味がない。300キロは走れたが320キロは走れない。今日時点のぼくの実力はここまでだ。四国横断は、残り20キロを残しリタイアという結果でよいと判断し、この旅を終える。
     本番である北米大陸横断フットレースでは、走れなくなったらオシマイである。歩きをまじえていては、日々設定される関門時間の突破は望めない。時間をクリアできなければ無情にも失格者である。砂漠の真ん中で荷物をまとめヒッチでもしながら帰るしかない。
     どんなに遅くてもいいから走り続ける・・・それが北米完走を達成する唯一最大の条件だ。本番まで半年ある。あと何度か500キロ走を行い、超長距離に対応できる脚を作りあげなくてはならない。傷まない脚、タフな脚を早くモノにしたい。
  • 月刊タウン情報トクシマ2月号 実売部数報告1102_タウトク部数報告.pdf

    月刊タウン情報トクシマ2月号 実売部数を報告します。タウトク2月号の売部数は、
    6,802部でした。詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。
    メディコムは、「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU」「結婚しちゃお!」の実売部数を創刊号から発表しつづけています。

    雑誌の実売部数を発行号ごとに速報として発表している出版社は、当社以外では日本には一社もありません。実売部数は、シェア占有率を算出し、媒体影響力をはかるうえで最も重要な数値です。他の一般的な業界と同様に、出版をなりわいとする業界でも正確な情報開示がなされるような動きがあるべきだと考えています。わたしたちの取り組みは小さな一歩ですが、いつかスタンダードなものになると信じています。
  • 月刊タウン情報CU2月号 実売部数報告1102_CU部数報告.pdf

    月刊タウン情報CU2月号の実売部数を報告します。CU2月号の売部数は、
    4,258部でした。詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。

    長らく雑誌の実売部数はシークレットとされてきました。雑誌は、その収益の多くを広告料収入に頼っているためです。実際の販売部数と大きくかけ離れ、数倍にも水増しされた「発行部数」を元に、広告料収入を得てきた経緯があります。
    メディコムでは、その悪習を否定し、「月刊タウン情報CU」「月刊タウン情報トクシマ」「結婚しちゃお!」の実売部数を創刊号以来、発表しつづけています。
  • 結婚しちゃお!冬号 実売部数報告11冬号_結婚しちゃお!部数報告書.pdf
    11冬号_結婚しちゃお!部数推移.pdf

    結婚しちゃお!冬号 実売部数報告です。
    結婚しちゃお!冬号の売部数は、1,123部でした。
    詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。

    メディコムでは、自社制作している
    「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU」「結婚しちゃお!」の実売部数を発表しております。
  • さらら3月3日号で、今こそ! 気になるアイツを徹底洗浄 salala2011303気候も暖かくなり始め、春からの新生活に向けてフレッシュな気分で準備を始めるころでは? そんなときタバコのヤニで色が変わってしまったカーテンやくすんだラグ、しみのついたカーペットが目についてしまうと気分もブルーに…。そんな自力ではどうしようもない家の中の汚れは、プロにおまかせ! 徹底的にキレイにしてもらおう。

    また表紙で好評連載中のさらランキング!にも注目。テーマは、「最近始めたエエことランキング」。今話題の朝活をはじめ、お尻スクワットでサイズダウンやなたまめ茶で口臭予防、炒り大豆で便秘改善など、体に良さそうなラインナップ。気になるものはぜひ試して、新しい季節をベストコンディションで迎えましょう〜。