公開日 2011年08月24日
■8月13日、ステージ56
距離/77.6キロ
朝、広い公園の脇を通過していると、たくさんのランナーらしき人たちがジョグをしています。公園の遊歩道を使って市民マラソン大会が行われる寸前のようです。
ゴールゲートや大きなデジタル時計も用意され、日本の小ぶりな市民マラソン大会と雰囲気は変わりません。ところが、ひとつだけまったく違う風景があります。男性ランナーの多くが上半身裸なんです。
そういえば今まで、都市郊外や公園で見かけた男性ランナーたちも、上半身裸でショートパンツ、ってのが一般スタイルでした。ランナーとしてちゃんと造り込まれた筋肉を揺らせて軽快に走ってゆく姿は、同性ながらまばゆく見惚れます。
日本では真夏のピークでも、公園や河川敷を裸で走るなんて許されない雰囲気です。汗びしょびしょで暑そうなのに、なぜか重ね着しロングスパッツに更に膝丈パンツなど合わせるのが最近の日本の定番になっています。よーわからん傾向。
距離/77.6キロ
朝、広い公園の脇を通過していると、たくさんのランナーらしき人たちがジョグをしています。公園の遊歩道を使って市民マラソン大会が行われる寸前のようです。
ゴールゲートや大きなデジタル時計も用意され、日本の小ぶりな市民マラソン大会と雰囲気は変わりません。ところが、ひとつだけまったく違う風景があります。男性ランナーの多くが上半身裸なんです。
そういえば今まで、都市郊外や公園で見かけた男性ランナーたちも、上半身裸でショートパンツ、ってのが一般スタイルでした。ランナーとしてちゃんと造り込まれた筋肉を揺らせて軽快に走ってゆく姿は、同性ながらまばゆく見惚れます。
日本では真夏のピークでも、公園や河川敷を裸で走るなんて許されない雰囲気です。汗びしょびしょで暑そうなのに、なぜか重ね着しロングスパッツに更に膝丈パンツなど合わせるのが最近の日本の定番になっています。よーわからん傾向。
アメリカの裸ランナーの気持ちよさそうな姿を見るとうらやましいです。市民マラソンという概念やカルチャーは主にアメリカから輸入されたものだけど、「上半身裸」はオプションとしても輸入時に除外されたみたいです。
ちなみにぼくは毎年7月に入れば小松海岸を裸で走っています。海だからかまわないでしょ、と思うようにしてます。
今日は痛い場所が左膝一カ所しかなく、きわめて快調に77キロを走りきれました。
あと15日でニューヨークに着いてしまうけど、神様仏様、ゴールまでに一度でいいから、たった一日でいいので、痛みのない状態で走れる日をください。そしたら何でも言うこと聞きますから。
記録/12時間25分
■8月14日、ステージ57
距離/68.6キロ
今さら何をだけど、こういったレース形式の大会は本来のぼくの旅のスタイルではありません。アフリカ大陸を徒歩横断した時のように、一人ぼっちで、風の吹くままに行く先を決め、現地の風土・言語に溶けこんで旅するのが基本です。
一方でレース形式の旅は、鍛え込んだアスリートたちが極限の自然環境と時間制限のもと、心身の限界に挑戦し、成し遂げた際に大きな達成感を得るものです。
ぼくにとってレース形式の大陸横断は、これが最初で最後になるな、と最近実感しています。どうひっくり返してパタパタハタいてみても、ぼくにアスリート的素養はありません。また大勢のキャラバンを組んで人間関係を構築しながら進んでいく旅も、性に合っていません。他人の考えをまず優先すべきだから。
ぼくは一人で極限を行き、生きるも死ぬも自分が決定づけるという場所にいたいです。
今回が最初で最後のロング・ステージ・レースです。あと2週間、二度とない時を愉しまなくちゃな。
今日は実にアメリカらしい街を走りました。コロンバスという巨大な街は中心部に高層ビル群と尖塔のある教会を抱き、その周囲をダウンタウンが取り巻いています。下町には危険で不穏な雰囲気が漂ってますが、そこいらのルードボーイより汚く汗まみれのぼくらにちょっかい出す暇人はいないようです。
ゴミと廃屋とボロ車だらけの下町から更に郊外に足を延ばせば、瀟洒な邸宅や店が連なり、絵に描いたような(セーターを肩に羽織った紳士が、ブロンドの美しい妻と、風船持った2人の子供)アングロサクソンの中流階級以上の人びとが闊歩しています。人びとは、自分の階層と近い人々で集まり、街を形成します
アメリカの中規模都市は30キロほどの都市圏を形勢しています。階層社会がつくる同心円を突っ切って移動するぼくたちには、その構造がよく見渡せます。
今日あらたに左スネを傷めました。現在は、右アキレス腱、左ひざ、両脚の足底筋の痛みに苦しんでいます。あーやっぱ最後の最後まで楽しく走れる日が来るなんてこと、期待してはならんのでしょうね。
記録/10時間56分
■8月15日、ステージ58
距離/83.3キロ
スタートから200メートルも進んでない歩道の段差につまづき派手に転倒。腕を擦りむいた。なにやってんだろな。
今日は一日、よく走りました。バタンキューです。
尊敬すべき2人の日本人ランナーがいます。一人は日本人として史上2人目となる2度の北米横断レース完走という偉業達成を目前にした越田さん。
もう一人は、世界中の辺境レースに出て何度も優勝している石原さん。砂漠、ジャングル、ヒマラヤから南極まで世界中が遊び場みたいな人です。
この2人、異常に負けず嫌いで、2人が近い位置を走ると必ず牽制し、煽りたて、最後はデッドヒートに発展します。誰れーも見てないところで、恐ろしいスピードで抜きつ抜かれつしています。今日は2人の戦いを見学してやろうと後方に着こうとしましたが、こっちはキロ6分で走ってるのにぐんぐん引き離されていきます。既に60キロも走ってるんですよ。しかもゴールまで20キロ以上あるんですよ。まったく何考えてるんでしょう。
60歳と66歳。研究者と経営者。火のような闘争心を持っています。
すごいデッドヒートでしたね、と声をかけると「デッドヒートなんてしてない。遊んでやっただけ」と捨てぜりふ。カッコイイ〜。
NYまで903キロ、あと12日
記録/12時間49分
■8月16日、ステージ59
距離/88.6キロ
走りはじめて驚きました。「どこも痛くない!」
こんな時がやってくるなんて!
かばう場所がなく、また深刻な体調不良なく走れるのは58日ぶり。つまり大会初日以来です。
いつもドンケツを顔ゆがめて走っているぼくが、上位グループに混じってタッタカ爽快に走っている姿を目にして、大会スタッフや他国のサポートクルーが何が起こったのか、と驚いています。
選手たちは「脚が治ってよかったな!」と自分のことのように喜び、背中を叩いてくれます。
58日間、走ることの大部分を占めていたのは苦痛でした。痛い、つらい、苦しい。そればかりでした。朝が来るのが嫌でした。朝起きて、今から走るって思うだけで吐き気がしました。十時間以上も続く苦痛を思い、言葉を失いました。走ることは、乗り越えるべき苦行でした。
今感じてること。走ることはこんなに気持ちいいんだ。景色が後ろに流れてくのが速いな。どこもかばわずに走ったらこんなにスピードが出るんだな。ニューヨークに着くまでに、こんな日が来るとは思ってなかった。これが今日だけの出来事なのか、明日には故障が再発するのかわからないけど、今日はしあわせ。明日からも無痛が続いて欲しいなんて贅沢は思わない。
そういえば数日前に神様仏様にお願いしたところだったな。たった一日だけでも自由な気持ちで走らせてくれたランニングの神様仏様に感謝したい。
NYまで815キロ、あと11日
記録/11時間57分
■8月17日、ステージ60
距離/81.0キロ
今日は不愉快なことがいくつかあり、むしゃくしゃしています。
素晴らしい人は、人間を中心とした目的や夢を持っています。
つまらない人は、仕組みを完成させたり、効率をあげること自体を到達点に設定してしまいます。
何を言いたいのか不明なことを書くのはクソ野郎な行為です。
今日はぐっすり寝ます。そして明日一生懸命走り、汗まみれになります。それだけでいいはずです。
NYまで734キロ、あと10日
記録/12時間15分
ちなみにぼくは毎年7月に入れば小松海岸を裸で走っています。海だからかまわないでしょ、と思うようにしてます。
今日は痛い場所が左膝一カ所しかなく、きわめて快調に77キロを走りきれました。
あと15日でニューヨークに着いてしまうけど、神様仏様、ゴールまでに一度でいいから、たった一日でいいので、痛みのない状態で走れる日をください。そしたら何でも言うこと聞きますから。
記録/12時間25分
■8月14日、ステージ57
距離/68.6キロ
今さら何をだけど、こういったレース形式の大会は本来のぼくの旅のスタイルではありません。アフリカ大陸を徒歩横断した時のように、一人ぼっちで、風の吹くままに行く先を決め、現地の風土・言語に溶けこんで旅するのが基本です。
一方でレース形式の旅は、鍛え込んだアスリートたちが極限の自然環境と時間制限のもと、心身の限界に挑戦し、成し遂げた際に大きな達成感を得るものです。
ぼくにとってレース形式の大陸横断は、これが最初で最後になるな、と最近実感しています。どうひっくり返してパタパタハタいてみても、ぼくにアスリート的素養はありません。また大勢のキャラバンを組んで人間関係を構築しながら進んでいく旅も、性に合っていません。他人の考えをまず優先すべきだから。
ぼくは一人で極限を行き、生きるも死ぬも自分が決定づけるという場所にいたいです。
今回が最初で最後のロング・ステージ・レースです。あと2週間、二度とない時を愉しまなくちゃな。
今日は実にアメリカらしい街を走りました。コロンバスという巨大な街は中心部に高層ビル群と尖塔のある教会を抱き、その周囲をダウンタウンが取り巻いています。下町には危険で不穏な雰囲気が漂ってますが、そこいらのルードボーイより汚く汗まみれのぼくらにちょっかい出す暇人はいないようです。
ゴミと廃屋とボロ車だらけの下町から更に郊外に足を延ばせば、瀟洒な邸宅や店が連なり、絵に描いたような(セーターを肩に羽織った紳士が、ブロンドの美しい妻と、風船持った2人の子供)アングロサクソンの中流階級以上の人びとが闊歩しています。人びとは、自分の階層と近い人々で集まり、街を形成します
アメリカの中規模都市は30キロほどの都市圏を形勢しています。階層社会がつくる同心円を突っ切って移動するぼくたちには、その構造がよく見渡せます。
今日あらたに左スネを傷めました。現在は、右アキレス腱、左ひざ、両脚の足底筋の痛みに苦しんでいます。あーやっぱ最後の最後まで楽しく走れる日が来るなんてこと、期待してはならんのでしょうね。
記録/10時間56分
■8月15日、ステージ58
距離/83.3キロ
スタートから200メートルも進んでない歩道の段差につまづき派手に転倒。腕を擦りむいた。なにやってんだろな。
今日は一日、よく走りました。バタンキューです。
尊敬すべき2人の日本人ランナーがいます。一人は日本人として史上2人目となる2度の北米横断レース完走という偉業達成を目前にした越田さん。
もう一人は、世界中の辺境レースに出て何度も優勝している石原さん。砂漠、ジャングル、ヒマラヤから南極まで世界中が遊び場みたいな人です。
この2人、異常に負けず嫌いで、2人が近い位置を走ると必ず牽制し、煽りたて、最後はデッドヒートに発展します。誰れーも見てないところで、恐ろしいスピードで抜きつ抜かれつしています。今日は2人の戦いを見学してやろうと後方に着こうとしましたが、こっちはキロ6分で走ってるのにぐんぐん引き離されていきます。既に60キロも走ってるんですよ。しかもゴールまで20キロ以上あるんですよ。まったく何考えてるんでしょう。
60歳と66歳。研究者と経営者。火のような闘争心を持っています。
すごいデッドヒートでしたね、と声をかけると「デッドヒートなんてしてない。遊んでやっただけ」と捨てぜりふ。カッコイイ〜。
NYまで903キロ、あと12日
記録/12時間49分
■8月16日、ステージ59
距離/88.6キロ
走りはじめて驚きました。「どこも痛くない!」
こんな時がやってくるなんて!
かばう場所がなく、また深刻な体調不良なく走れるのは58日ぶり。つまり大会初日以来です。
いつもドンケツを顔ゆがめて走っているぼくが、上位グループに混じってタッタカ爽快に走っている姿を目にして、大会スタッフや他国のサポートクルーが何が起こったのか、と驚いています。
選手たちは「脚が治ってよかったな!」と自分のことのように喜び、背中を叩いてくれます。
58日間、走ることの大部分を占めていたのは苦痛でした。痛い、つらい、苦しい。そればかりでした。朝が来るのが嫌でした。朝起きて、今から走るって思うだけで吐き気がしました。十時間以上も続く苦痛を思い、言葉を失いました。走ることは、乗り越えるべき苦行でした。
今感じてること。走ることはこんなに気持ちいいんだ。景色が後ろに流れてくのが速いな。どこもかばわずに走ったらこんなにスピードが出るんだな。ニューヨークに着くまでに、こんな日が来るとは思ってなかった。これが今日だけの出来事なのか、明日には故障が再発するのかわからないけど、今日はしあわせ。明日からも無痛が続いて欲しいなんて贅沢は思わない。
そういえば数日前に神様仏様にお願いしたところだったな。たった一日だけでも自由な気持ちで走らせてくれたランニングの神様仏様に感謝したい。
NYまで815キロ、あと11日
記録/11時間57分
■8月17日、ステージ60
距離/81.0キロ
今日は不愉快なことがいくつかあり、むしゃくしゃしています。
素晴らしい人は、人間を中心とした目的や夢を持っています。
つまらない人は、仕組みを完成させたり、効率をあげること自体を到達点に設定してしまいます。
何を言いたいのか不明なことを書くのはクソ野郎な行為です。
今日はぐっすり寝ます。そして明日一生懸命走り、汗まみれになります。それだけでいいはずです。
NYまで734キロ、あと10日
記録/12時間15分