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2022年6月

  • バカロードその155 アフリカ密林編2「耳虫と足ミミズ」

    文=坂東良晃(タウトク編集人。1987年アフリカ大陸5500km徒歩横断、2011年北米大陸横断レース5139km完走。人類初の自足による地球一周(喜望峰→パタゴニア4万km)をめざし、バカ道をゆく)

    (前号まで=アフリカ大陸の徒歩横断を試みる“ぼく”は二十歳。アフリカ東岸の国ケニア共和国の港町モンバサを出発した。ケニア、タンザニア、ルワンダを経て二千キロ余りを踏破し、ついに大密林地帯のザイールへと入る。迷路のようなジャングルをひたすら西へ西へと歩く)

     ジャングルに入って以来、ずっと頭痛が続いている。原因はわかっている「耳虫」だ。学術上の名前は知らない。ただ、ぼくの耳に住んでいる虫だから、そう呼んでいる。月の明るい夜、寝ている間にごぞごぞ耳に忍び込み、それからずっと居座っている。
     昼間は活動しない。夜になると耳の中でせっせと動き回っている。何を企んでいるんだろうか。ぼくの耳に城でも作ろうとしているのか。おかげで眠れないし、難聴気味だ。ガサガサゴソと今夜もうるさい。
                  □
     ジャングル生活七日目。何百カ所とある虫刺されの跡が、ひどく化膿している。じゅくじゅくと膿が溢れだし、いっこうに固まる気配がない。ハエが次々と飛来しては傷口をなめて、よけいひどくなっていく。絆創膏を貼って対応できる面積ではとうにない。放っておけば良くなるのか、膿を毎日しぼり出した方がいいのかわからない。カサブタを剥がすと、奥から生皮が出てくる。「絶対に剥がさない」と心に誓うのだが、カサブタの下で膿がパンパンに溜まると、張り裂けそうな痛さのあまりピンで刺してしまう。傷口からミルク色の液体がドロリと流れだす。それを目がけて、また数十匹のハエが群がってくる。ぼくはため息をつく。
                  □
     密林の深さは底知れない。村はめったに現れることなく、そして村に着いても食料は期待できない。ジャングルで暮らす人びとは、住居の周辺で自然繁殖した根菜類や野草、果物を食料としており、異邦人に提供できる食料の備蓄はほとんどない。
     森の樹々になっている果実を見つければ、手当たりしだいに口に入れてみる。たいていが青臭くて熟しておらず、食料には向いていない。野生のバナナは貴重なカロリー源であるが、その果肉は石のように硬く、咀嚼するのに苦労する。住民らは生では食べない。煮込み料理に使っている。
     ジャングルなら水くらいは困らないだろうと期待したが、水系に恵まれない村落ではたいへんな貴重品であった。村人たちは、何キロも離れた標高の低い場所にある谷川まで、ポリタンクや 一 斗缶を背負ったり頭に乗せて、水を汲みにいく。
     荷役はたいてい女性や子供の仕事だ。密林の小道を、顎の先から汗をしたたらせながら、水を運んでいる。そうやって苦労の末に汲んだ水が、透明な清水とは限らない。赤土混じりの茶色い水だったり、上流に村がある非衛生的な汚水だったりする。
     どこの村にも雨水を貯める錆びたドラム缶があるが、あまりきれいなものではない。小虫や蚊の絶好の産卵場所になっている。それでも水がなければ生活できないので、その水を煮沸して料理に使ったりしている。
     そして今、喉がカラカラになってたどり着いた村で、親切な老夫婦がさしだしてくれた白濁した水は、記録的なすさまじさだった。ガラス瓶に入った水は、カルピスのように白い。ゴクンと 一 気に飲む。つーんと腐ったような味が喉を刺激する。瓶を日光に透かしてみると、そこには何十匹ものボウフラが漂っている。屋外に出て吐いてしまおうか。しかし、水を恵んでくれた老夫婦に失礼なのではないかと思い直し、天井の梁を見上げてグッと飲み込む。
     昼過ぎから強烈な下痢に襲われる。キュルキュルと腸がねじれあがり、パンツを下ろす間もなく、水便が股間を濡らす。ウンコを漏らすたびに自我が壊れていく。ジャングルに四つん這いになってオエオエ吐き、じゅるじゅるクソを漏らす。
                  □
     ジャングル生活十日目。
     ドロドロにぬかるんだ道にスネまで浸かりながら、急坂を登っていく。泥道はお粥のようにトロリと熱い。密林に閉じ込められた空気はゆだっている。
     ゼエゼエゼエ。寝不足で倒れそうだ。耳虫が 一 晩じゅう暴れまわっていて、昨晩はよく眠れなかったのだ。
     土の匂いを近くに感じる。アレ? 鼻の横に木の根っこがある。高い椰子の木の向こうに青空が見える。ぼくは今、どういう状況にあるのだろう。知らぬ間に気を失って倒れていたのか。
     誰かがぼくを介抱してくれている。若者が、 一 人、二人…四人。
     「外国人、こんなところで昼寝かい?」と尋ねられる。リンガラ語の方言だ。リンガラ語というのはこのザイール国 一 帯で使われている共通言語なのだが、街や集落ごとに方言が強く、日々三十キロほど移動しているぼくにとっては、毎日言語が変わるような印象だ。
     だが、生きる・死ぬに関わるリンガラ語は何があっても学習する。水が欲しい、寝る場所はないか、食べるものを下さい、などだ。
     倒れた格好のぼくの口をついて出たのは「ハラへった」という言葉だ。
     「ハラへって、寝ていたのかい?」と若者たちが笑う。
     「うん、ハラがへってる。食べ物が欲しい」
     「じゃあ、ちょっと待ってろ」
     言うが早いか、若者の 一 人がスルスルと木を登り、紫色の果実を千切って、放り投げてくれる。かじりつくと、中からピンク色の果肉が現れ、ラズベリーのような味がする。若者は、ぼくが食べ終わるのを待っては、別の房を取りにいき、手渡してくれる。それを五、六回繰り返すと、飢えと乾きが収まり、正気を取り戻しはじめる。
     「君たちはどこへいくんだい?」と尋ねる。
     「キランボという街だよ。こいつを運んでいくんだ」。指さした先には、縄で括り付けられたビールケースが立てかけられている。 一 人分が背負う木枠の梱包に、ビール瓶がたっぷり三ダースは詰まっている。
     「俺たちは今からメシにするけど、オマエも 一 緒にどうだい。メシを食って元気が出たら、 一 緒にキランボまで行こう」と蒸したイモを取り出して、分け与えてくれる。ためらいもなく、むしゃぶりつく。
     彼らはイモをかじりながら、教科書のような本や大学ノートを見せあって、キャッキャとはしゃいでいる。覗き込むと、フランス語で書かれた数学の本だ。代数幾何のけっこう難解な内容。彼らはまだ十代だろう。こんなジャングルの奥地で、数学の勉強をしながら、森の中でビールケースの運搬をしている。なんか…かなわないなと思う。
     蒸しイモを食べると体力復活し、隊列の最後尾について行進する。彼らの荷物の十分の 一 の重さも背負ってないのに、山道をヒィヒィ喘いで、ついていくのに精 一 杯だ。
     キランボ村に入ると、ビール隊を歓迎する村人たちにドッと囲まれる。広場のあちこちで宴がはじまる。 一 本のビールを皆で回し飲みしながら、少し豪華な食事をごちそうになる。久しぶりのアルコール、喉から胃へと熱い塊が落ちていく。
     それから若者たちと森を抜けて川へ水浴びに行く。
     透明度ゼロの激流うずまく茶色い川だ。丸太を渡しただけの 一 本橋の上に皆で座り、石鹸でゴシゴシ体をこすりあう。石鹸だらけになるとドボンと川に飛び込む。
     通りかかったヤリを持った 一 団が、叫び声を上げながら川に飛び込んでくる。今から泊りがけで象を仕留めに行くのだ、と威勢がいい。このへんの森はゴリラや象がよく出没するらしい。「象の肉はうまいんだぞ」と、まだ小学生のような若いハンターが自慢げに鼻を鳴らす。
                  □
     ジャングル生活十二日目。
     五日連続の雨。 雨季に突入したのだろうか。朝方から雨が降りだし、どんどん激しくなってくる。雨宿りにかけこんだバラックの建物は、この辺では珍しい診療所だった。「こんにちは、旅の者です。雨がやむまでいさせてください」とお願いする。ヨレヨレの白衣を着ているのは、齢七十にもなろうかという老医師だ。
     ぼくの様子をまじまじと見ていた老医師は「こっちに来い」と手招きをする。 近寄ると、老医師は化膿だらけのぼくの腕をムンズと掴み、手にした果物ナイフのようなもので、カサブタを削りはじめる。 「痛い、痛い」と叫んでも容赦してくれない。両方の腕が、膿と血まみれになる。生皮がむき出しになった皮膚の上から、ビーカーに入ったアルコールらしき液体を脱脂綿につけ、傷口に塗りたくる。
     「ヒィーッ」
     さらに老医師は、ぼくのリュックにくくりつけた靴下を指さし「それを寄越しなさい」と要求する。さしだすと、靴下の先をナイフでジョキジョキと切り裂く。「何をするんですか?」と抗議すると、環状にした靴下を、ぼくの腕にかぶせる。簡易包帯というわけだ。
     続いて、ぼくの足を掴んで椅子の上に載せると、ピンセットで親指の先をほじくりはじめる。爪と肉の間に差し込み、ぐりぐりかき回すと、白いイトミミズのような寄生虫と、大量の小さな卵が出てくる。アレヨアレヨという間に、深い穴が爪の脇に空いてしまう。そこに再びアルコールをかける。右足の三本の指先から「足ミミズ」が出るわ出る。いつの間にか、ぼくの身体には、いろんな生命体が住み着いていたのだ。
     膿は広がらないうちに出し切ってしまい、削った皮膚の部分は、消毒液をぶっかけ、蝿にたかられないよう布で覆う…野蛮だと思ったこの老医師の治療方法が、治癒までのいちばんの近道であることは、数日後に知ることになる。化膿した腕は綺麗になっていったのだ。
     老医師には「耳虫」のことは内緒にしておこう、何をされるかわかったものではない。
    (つづく)

  • ワンプレートごはん タウトク 7月号

    ■ワンプレートごはん
    エビフライやハンバーグなど主役級のおかずがコラボしたわんぱく系、お肉中心のボリューム系、旬の野菜を鮮やかに盛り込んだヘルシー系など、お店によって特色はさまざま。料理人の感性が映し出される一皿を、ランチやディナーでカジュアルに味わい尽くしたい!
    ■夜空を染める夏花火
    今年こそは花火が見たい! お腹まで響くあの重低音を感じながら眺めたい! そんな願いが叶いそうです。
    例年通りとはいかないまでも、開催が予定されている徳島県内の花火大会をピックアップ。
    ■徳島県高校総体 2022
    部活に青春をささげる高校生たち。学校の名を背負い繰り広げられた熱戦をレポート!


     

  • startt6/23号 セルフビルド&DIYで店をつくる
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    ■セルフビルド&DIYで店をつくる
    自ら設計図を引き、材料を調達して理想の店をつくっていく。独学でセルフビルドしたベーカリー、内装に加え電気や水道工事もすべてDIYしたブリュワリー、夢を叶えるべく建築設計会社で下積みして開いたロースタリー。「ほしいものは自分で作る」そんな、たくましきオーナーに迫る。

    ■徳島から輝く!
    [CAMPUS LIFE]徳島の大学&専門学校に通う学生たちの今を捉えたインタビュー [キャンパスガイド]各学校の教育方針や校風、どんなことに力を入れているのかなどがわかる学校案内。 [TOKUSHIMA WORKERS]縁の下の力持ちとなってコツコツ仕事に向き合う人、変化の激しい世の中を牽引すべく技術を磨く職人。徳島を切り開いていく企業や仕事人たちを追う。

  • バカロードその154 アフリカ密林編1「大ジャングルの光」

    文=坂東良晃(タウトク編集人。1987年アフリカ大陸5500km徒歩横断、2011年北米大陸横断レース5139km完走。人類初の自足による地球一周(喜望峰→パタゴニア4万km)をめざし、バカ道をゆく)

    (前号まで=アフリカ大陸の徒歩横断を試みる“ぼく”は二十歳。アフリカ東岸の国ケニア共和国の港町モンバサを出発した。寒村でマラリアに倒れ死線をさまよったが、療養期間を経て再び歩きだす。ケニア、タンザニアを経て、山岳国家ルワンダを横断。密林国家ザイールの国境へとたどり着く)

     山岳国家であるルワンダから、ザイールへの国境越えはキブ湖を渡るボートに乗る。大ジャングルが広がる密林国家ザイールの間に横たわる黒い湖だ。
     このボートがまるで出発しない。
     ルワンダ最後の街キブエに来て、はや三日になる。湖畔の教会は、ボート待ちの商人で溢れかえっている。 一 泊百フラン(五十円)のベッドが隙間なく並んだ大部屋は、旅の興奮に憑かれた商人たちの、甲高い笑い声や、大げさな叫び声が充満している。
     「船はいつ出るんだい?」と尋ねても、誰も知らない。知ろうともしないのだ。皆が皆、結末のない旅を楽しむかのように、時間を無駄に費やしている。
     ぼくは、船着き場に近い湖畔の大岩に座って、夕日が落ちるまで湖を眺めている。
     湖の向こう岸に、べろーんと薄っぺらに広がる土地がザイールなのだろうか。切り立った山々が続いたルワンダとはまるで様相が違う。地図を見ると、ザイール側の国境の街ブカブから先は、七百キロ西方にある都市・キサンガニまで街らしき街はない。道を示す線は破線となり、やがては途切れてしまっている。今から進む先、地図上は密林を示す濃い緑色で覆い尽くされている。そこは既にコンゴ川流域エリアだ。
     アフリカ大陸の中央部を蛇行するコンゴ川(ザイール川)は、不思議な流れをもつ大河である。南半球のザンビア国境に端を発し、南から北へと赤道をまたぎながら、南米アマゾンと並ぶ世界最大のジャングル地帯を形成する。その湿地帯では、いくつもの支流を飲み込みながら、西へと向きを変え、やがて北から南へと二度目の赤道またぎをし、源流から四千七百キロを経て、彼方の大西洋へと流れ込む。総延長の四千七百キロという距離は、日本から真南に向かえばオーストラリア大陸に達するほどの遠大さだ。
     これからぼくが足を踏み入れるコンゴ盆地 一 帯は、わずかに整備された車道以外は、ほとんどが人跡未踏の空白地帯という魔境中の魔境である。インド洋岸からこの地までの乾燥地帯サバンナ二千キロの旅は、水不足による乾きとマラリア原虫との戦いだった。これからはじまる密林の旅は、どんな困難を突きつけてくるのだろうか。果たして、生きて七百キロ先のキサンガニまでたどりつけるのか。  
                  □
     ようやく国境越えのボートが出航する。乗り合わせた若者たち五人は気のいい連中であった。彼らはザイール出身のロックオーケストラバンド「ザ・ジョイ」のメンバーで、ルワンダでの演奏旅行を終え、ブカブの街に帰るところだという。彼らは、船上で即興の演奏会を行った。ローリング・ストーンズの「刺青の男」のナンバーを、A面の 一 曲目から順に歌う。
     彼らは、ぼくの意味不明の旅を訝しがることなく共感し、「ブカブでは君の面倒を見させてもらえないか」と申し出てくれる。
     国境の船着き場に降り立つと、ザイール最初の町ブカブの街並みが開ける。
     突然、別世界へ瞬間移動してしまったようだ。数時間前までいたルワンダと、何もかもが違っている。店の看板や商品のパッケージはすべてフランス語になった。下校途中の子供たちが、外国人のぼくを目にすると「ボンソワール」と挨拶してくれる。人々の視線は穏やかで、ルワンダのギスギスした空気はない。
     市場で値引き交渉している客と店主の会話が耳に飛び込んでくる。ケニアやタンザニアの公用語であるスワヒリ語だ。ルワンダで通じなかったスワヒリ語を数十日ぶりに聞くと、異郷で母国語に遭遇したかのように温かに耳に流れ込んでくる。ぼくはスワヒリ語圏に百日ほどもいたため、すっかり音感に馴染んでしまっているのだ。
     両替場でアメリカドルをザイールの通貨に換金する。通貨名は国名と同じ「ザイール」である。百ドル紙幣を 一 枚、窓口に差し出すと、分厚い札束が十二個、ドスドスと積み上げられる。十ザイール札が千二百枚分。十ザイールは約十円だ。日本円に換算しやすいのは良しとして、千二百枚もの札束を貧乏旅行者が所有している違和感が甚だしい。
     この町でいちばん見すぼらしい格好をしているぼくが、リュックがパンパンに膨らむまで札束をギッシリ詰め込んでる事実に、罪悪感を感じる。「貧乏旅行者」と言っても、この国では金持ちに類する。他人に食べ物や寝床の施しを受けながら、実は背中に大金を背負っているというギャップが甚だしい。
                  □
    ホームステイ先のバンドメンバー宅では、家族ぐるみで温かく迎えられ、夜遅くまで旅と日本の話で盛り上がる。真夜中になり、若者のベッドに二人でもぐりこんでからも、国境越えの興奮からか眠れず、明け方まで話し込む。
     口にしようかどうか迷ったが、ルワンダで受けた暴力と差別について、話してみる。彼はちょっと考えてから、表情を曇らせて答える。
     「ルワンダは問題が多い所だ(※)。君が経験したいろいろな出来事は、君とルワンダの問題ではなくて、ルワンダ自身の問題なんだ。ただ君は、君の国に帰ってから、そこであったことを他の人にも伝えなくちゃならない。そうすることがルワンダにとって 一 番必要なんだ」
     けど、やっぱりぼくの問題でもある、と返そうとしたが、彼のアドバイスを守ることが自分にできる唯 一 のことだろうと思い、彼の言葉を噛みしめる。
     (※この数年後、ルワンダでは数百万人が生命を落とす大虐殺が起こる)
                  □
     ブカブの街を出て、しばらく湖岸道路を進んだあと、道は深い森へと伸びている。この辺りの森は、野生ゴリラの生息地として世界的に名高い。森に入ってからは、ひんぱんに集落が現れる。無人地帯が続いた序盤のサバンナ地帯とは、人の往来の数が違う。七百キロ彼方のキサンガニまで歩いていくという奇妙な旅人を、村人らはみな珍しがり、心配し、サトウキビや水を差し入れてくれる。
     昼頃から、ヤギの親子を連れた老夫と、二十キロほどを抜きつ抜かれつ歩く。夕暮れ時分にたどり着いた集落で、老夫は「今日はここまでにしなさい」とぼくの手を取り、民家へ連れていく。雰囲気からして、老人の家ではなく、知り合いの家のようだ。
     突然の異邦人の訪問に、家族は戸惑うこともなくベッドを用意し、スクマ(緑黄野菜の煮込み)とウガリ(蒸したキャッサバ芋の粉)をテーブルに並べる。「家族のために用意した夜食でしょう?」と遠慮しても、「気にするな、食べろ食べろ」と勧める。
     食事を終える頃には、村人たちが庭先に見物に集まっている。村の少年が「コレ食え。うまいぞ」と渡してくれたのは、昼間ごにょごにょと道路を這っていたグロテスクな紅い毛虫だ。口に含んで噛んでみると変な味がして「ギョエ」っと吐き出す。村人たちはキャッキャと笑う。
                  □
     ザイールに入って三日目。久々に大きな村に着く。食堂に入ってワリ・ニャ・ニャマ(肉ぶっかけご飯)を注文すると、異様に臭い肉が出てくる。割ってみると、中にたくさんの白い幼虫が茹で上がって死んでいる。我慢して飲み込んでみたが、死ぬほどまずい。喉を通らないので「水をください」と頼む。出されたコップ水をよく確かめずに飲むと「ゲボーッ」とむせ返る。これは紛れもなく酒だ。店の主人は、ぼくの様子を見て、腹をかかえて笑っている。
                  □
     道はだんだんとジャングルの奥深くへと分け入っていく。ツルがまとわりついた背丈の高い椰子の木、巨大なシダの群生、鳥獣のささやき声や遠吠え。「グォーグォー」という大型獣の鳴き声が辺りを圧する。ジャングルが静寂に包まれる。この森の主の雄叫びなのだろうか。
     サルの死体をぶら下げた少年たちが歩いていくので「それは何だい?」と尋ねると「チャクラだ」(メシだ)と答える。サルの身体は燻製されたのか黒くいぶされ、硬直している。口と目を大きく開いて、天に向かって吠えているかのようだ。
     獣道のような頼りない山道が十五キロも続くと、やがて踏み跡に変わり、道が途切れる。サラサラと水音が聴こえる。突然、密林が開けると、二十メートルほどの幅を持つ小川が横たわっている。水は澄み切っていて、磨かれた川砂の模様がくっきりと浮かび上がる。跳躍する川魚が川面を叩き、飛沫が宙を舞う。太陽の光が降り注ぎ、光が揺れている。
     川面に蝶が舞っている。光の中に何千、何万という蝶がいる。銀色の羽を光の渦の中で羽ばたかせながらダンスを踊っている。目を開けていられないほどの光だ。
     ぼくは靴を脱ぎ捨て、浅瀬へ飛び込む。頭のてっぺんまでピーンと冷たさが伝わる。蝶といっしょにぼくは踊ってみる。ここは、密林の天国なのだ。
    (つづく)

  • 初夏を味わう CU7月号

    ■初夏を味わう
    新茶を使った抹茶そばや冷麺などの冷やこい麺に、厚切りベーコンをサンドしたハンバーガーやスパイスの香り豊かなカレー、刺激的な旨辛料理といったスタミナごはん。マンゴーたっぷりのパフェや濃厚リッチなジェラート、完熟パイナップル大福など最新の和洋のスイーツまで!あつ~い夏こそ食べたい初夏の味覚、集めました。
    ■いっとこかっとこ
    最新のお出かけ情報をキャッチ!

  • さらら6/16号 SPICEたっぷりのCURRYに夢中!
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    ■SPICEたっぷりのCURRYに夢中!
    スパイスを活かしたカレーがいただけるお店をご紹介
    ■旬の味覚狩りに行こう
    ~ブルーベリー編~
    ■徳島季節の花めぐり
    ■「40歳超えて初ママになる」日記
    ■手土産手帖
    柚子の爽やかな風味が魅力の調味料

           

  • startt6/9号 情熱!社会人スポーツ
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    ■青春の続編 情熱!社会人スポーツ
    ガムシャラに練習した学生時代とはまた違う魅力が社会人スポーツにはある。年齢も仕事もまったく違う人たちと、ひとつの競技に打ち込む。勝つために真剣に取り組む面白さ。そこには日常生活では得られない達成感がある。ほとばしる情熱に迫る!

    ■GOOD MORNING TIME
    「朝はコーヒーだけ…」なんて言ってる人にこそお届けしたい。しっかり朝ごはんを食べると、今日という一日の始まりに力が入るもんです。炊きたてごはんとお味噌汁の和定食、パン&サラダの洋食セット、ズズッとうどんをすするのもGOOD!

  • タウトク・CU5月号 実売部数報告

    月刊タウン情報トクシマ5月号、月刊タウン情報CU5月号の実売部数報告です。

    タウトク5月号の売部数は、4,566部
    2205_タウトク部数報告
    CU5月号の売部数は、4,372部
    2205_CU部数報告
    でした。

    詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。
    多くの出版社では、発行する雑誌において実際の販売部数と大きくかけ離れた「発行部数」を公表しています。当社メディコムが発行する「タウトク」「CU」では、「実際に何部が売れたのか=実売部数」を発表しています。

  • さらら6/2号 品数多めの大満足定食ランチ
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    ■大満足! いろんなおかずをちょこちょこ味わえる定食ランチ
    ■とくしま 季節の花めぐり~初夏~
    ■はなまるLIFEのススメ
    【ウォーキング編】
    ■旬の味覚を求めて
    ブルーベリー狩り編 Part1
    ■オムの魔法
    大人版"お子様プレート"のオムライス