公開日 2011年08月25日
■8月23日、ステージ66
距離/43.3キロ
(走ったのは50.7キロ)
70日間のうち最も距離の短い今日。選手やスタッフにはリラックスムードが漂っています。
なぜ43キロという短距離の設定かといえば、午前中にレースを終え、午後は荷物整理や洗濯など、各自がニューヨーク到着の準備を、という主催者の配慮なのです。
ぼくはたいして準備する用件もないので、今日はゆっくり走り明日からの4戦に向け、体力温存を図ろうという腹積もりでスタートしました。
選手同士、軽い会話を交わしながら、いつもよりはゆったりペースで進んでいます。そんなほんわかムードの一日が、大会史上最悪、大波乱の一日になるなんて誰が想像できたでしょうか? この大会には、サディストな神が宿っているとしか思えません。
距離/43.3キロ
(走ったのは50.7キロ)
70日間のうち最も距離の短い今日。選手やスタッフにはリラックスムードが漂っています。
なぜ43キロという短距離の設定かといえば、午前中にレースを終え、午後は荷物整理や洗濯など、各自がニューヨーク到着の準備を、という主催者の配慮なのです。
ぼくはたいして準備する用件もないので、今日はゆっくり走り明日からの4戦に向け、体力温存を図ろうという腹積もりでスタートしました。
選手同士、軽い会話を交わしながら、いつもよりはゆったりペースで進んでいます。そんなほんわかムードの一日が、大会史上最悪、大波乱の一日になるなんて誰が想像できたでしょうか? この大会には、サディストな神が宿っているとしか思えません。
走りはじめてわずか1キロで異変が起こりました。スピードランナーのイタロー選手(イタリア)が、草むらかきわけ現れ、「前の選手3人が間違えた道を行ってしまった」と主催者兼ランナーのセルジュ選手に伝えました。セルジュ選手は3人を追うべく、血相かえて引き返します。
でも実はこの3人こそが正しい道を行き、残る11選手が道を間違えたのです。ただ真っ直ぐ進むだけの単純なコースでしたが、非常に緩いカーブの分岐が走路にあり、暗闇も手伝って誰も自分が直線道路から外れたと気づけなかったのです。
やがて夜が明け、景観が見えはじめてから、ぼくは疑問を抱きはじめました。まず、道路自体が6車線で予定コースに対して広すぎます。また本来あるべき交差点がなく、鉄道高架が現れる距離がずれています。間違えた道を行ったのは3人ではなく、自分たちではないか? しかし自信が持てません。なんせほぼ全員に近いランナーが今この道を走っているのです。
しかし走れば走るほど「間違いじゃってコレ」が確信に近づいてきます。(前を行ってるランナーを止めんと大変じゃ!)。そこからは自分が出せる最高速度で前の選手を追いました。1キロほど追いかけ、ようやく2人のランナーを止め、間違いの可能性を伝えますが、なかなか信じてもらえません。なんせもう4キロ近く走ってきた道です。
峠の頂上で立ち往生していると、前方からサポート車が現れ「この道はコースではない」と伝えられました。遥か彼方には、前を行ってたランナーたちが猛烈な勢いで引き返して来るのが見えます。ぼくも踵を返し全速力で正規ルートを目指します。なんせ往復7キロ以上です。制限時間、ヤバい! もう全力でいかないと間に合うかどうかのギリギリ。キロ5分台で飛ばしまくります。ちなみに現在の衰弱した体力におけるキロ5分台は、健康状態のキロ3分台に匹敵する苛烈さです。
顔ゆがめ、よだれ流し、
いったん真っ白になった頭で、ゴールまでの平均ペースを計算します。混乱しているので何度計算しても答えが違います。
必死で、必死であえぎ走りながら、脳裏にはいろんな思いが交差します。
(65日も完走続けてきて、ニューヨークを目の前にして、道間違いで失格なったらダサすぎるって!)(こんなドラマチック、用意せんでええって!)(こない全力疾走つづけたら、脚まためげるって!)
大会70日間で、最もゆったりできるはずだった今日、ぼくを含む11人のランナーたちは地獄のような時間との戦いを強いられながらも、なんとかゴールにたどりついたとさ。ほんまにこんなドラマいらんのんよ〜
NYまで297キロ、あと4日
記録/7時間14分
でも実はこの3人こそが正しい道を行き、残る11選手が道を間違えたのです。ただ真っ直ぐ進むだけの単純なコースでしたが、非常に緩いカーブの分岐が走路にあり、暗闇も手伝って誰も自分が直線道路から外れたと気づけなかったのです。
やがて夜が明け、景観が見えはじめてから、ぼくは疑問を抱きはじめました。まず、道路自体が6車線で予定コースに対して広すぎます。また本来あるべき交差点がなく、鉄道高架が現れる距離がずれています。間違えた道を行ったのは3人ではなく、自分たちではないか? しかし自信が持てません。なんせほぼ全員に近いランナーが今この道を走っているのです。
しかし走れば走るほど「間違いじゃってコレ」が確信に近づいてきます。(前を行ってるランナーを止めんと大変じゃ!)。そこからは自分が出せる最高速度で前の選手を追いました。1キロほど追いかけ、ようやく2人のランナーを止め、間違いの可能性を伝えますが、なかなか信じてもらえません。なんせもう4キロ近く走ってきた道です。
峠の頂上で立ち往生していると、前方からサポート車が現れ「この道はコースではない」と伝えられました。遥か彼方には、前を行ってたランナーたちが猛烈な勢いで引き返して来るのが見えます。ぼくも踵を返し全速力で正規ルートを目指します。なんせ往復7キロ以上です。制限時間、ヤバい! もう全力でいかないと間に合うかどうかのギリギリ。キロ5分台で飛ばしまくります。ちなみに現在の衰弱した体力におけるキロ5分台は、健康状態のキロ3分台に匹敵する苛烈さです。
顔ゆがめ、よだれ流し、
いったん真っ白になった頭で、ゴールまでの平均ペースを計算します。混乱しているので何度計算しても答えが違います。
必死で、必死であえぎ走りながら、脳裏にはいろんな思いが交差します。
(65日も完走続けてきて、ニューヨークを目の前にして、道間違いで失格なったらダサすぎるって!)(こんなドラマチック、用意せんでええって!)(こない全力疾走つづけたら、脚まためげるって!)
大会70日間で、最もゆったりできるはずだった今日、ぼくを含む11人のランナーたちは地獄のような時間との戦いを強いられながらも、なんとかゴールにたどりついたとさ。ほんまにこんなドラマいらんのんよ〜
NYまで297キロ、あと4日
記録/7時間14分