徳島で若者を採用するお悩み その1「へんやって!高卒採用」

公開日 2006年07月05日

ふつうの就職制度にしてくれ!の巻

文責=坂東良晃(タウトク編集人)

「採用しにくい!」
高卒の若者を採用しようとして実感した。思ったように採用活動ができないのだ。
小社では、4年前から高卒の新卒採用をはじめた。といっても、もともと何歳でも入社して構わなかったんだけどね。16歳のフリーターでもやる気があれば、採用する。
学校に行ってない子を採用するのは未成年でも問題ない。保護者の許可をもらえばよいだけだ。
しかし「現役の高校3年生」を採用するのが、こんなにややこしいことだとは当初は想像していなかった。高卒採用をややこしくしている代表的な2つの制度について説明を試みたい(これがけっこう説明むずかしいんです)。
■「指定校制度」という制度
高校生を採用したいとき、企業はまず高校名を指定しなければならない、というルールである。意味わかるだろうか。つまり「高卒者3名募集」とし、全高校に声がけするのではなく、
「徳島商業高校に2名」「富岡西高校に1名」などと、学校を指定しなくてはならないのだ。どこの高校にどんな生徒がいて、自分とこの会社のビジネス・職種に向いている子がいるのかどうかなんて、最初からわかるはすがないのにである。
もし、別の高校にたまたま当社に就職希望してくれる生徒がいたとしよう。しかし、偶然か必然かその子の情報が入らない限り、企業と生徒をつなぐルートはない。仮にこの生徒が希望の会社に就職するためには、以下のような手続きをするしかないと想像する。生徒は事前に企業にアポを入れ、訪問し、人事担当者か経営者に面会しなくてはならない。そしてこう述べる。強く述べる。
「オレのいる高校を指定校にしてください。そうしたら就職担当の先生に、《オレあの会社の人事とハナシつけてきた。オレを推薦してほしい》と頼みますから。よろしく!」。
こんな根回しをしなくてはならないのだ。現実問題、そんなことするごっつい高校生はいないだろう。だから高校生に職業選択の自由って、あんましないのである。

■「一人一社制度」という制度
さらに理解に苦しむのがこの制度である。
先に述べた「指定校制度」のもと、企業が学校に「1名ほしい」とお願いする。すると学校側が、その企業にふさわしいと思われる生徒を1人選び、企業に推薦することになる。ぶじ推薦を受けた生徒だけが、その企業を受験する権利をもつ。推薦されなかった生徒は、企業に出かけていって自己PRすることも許されない。また推薦を受けた生徒は、いったん推薦を受けると、その会社の合否が出るまで、ほかの会社を受けることはできなくなる。ハアーッ、ため息つづきである。

「一人一社制度」の問題点は大きく2つある。
1.その企業にあった人材を、企業が決めるのではなく学校が決める、という点。企業というものは生き物である。毎年、いや月刻みでほしい人材の条件は変わる。優等生がほしい場合もあれば、スポ根なヤツがほしい場合もある。先生に反抗しまくってるアウトローがほしい場合だってある。しかし、こんな企業側の希望は学校には届かない。(だってこんな希望を書く欄は申請書にないのです)
また、推薦された生徒は、成績順で選ばれたのか、性格の向き不向きか、企業側は知るよしもない。
2.(生徒から見て)タイムロスが多い点。
生徒は1社に願書(履歴書など)を提出し、会社から採用試験の案内が来て、試験を受け、合否判定が出るまで、ほかの会社は受けられない。あれやこれやですぐ1カ月たってしまう。年末までが採用のピークだとしたら、高卒採用が解禁される9月からだと勝負は4カ月〜半年。どんどん時間がなくなっていく。高校生の立場からすると、すごくリスクが高いと思う。

指定校制度や一人一社制度は、高度成長時代のなごりだと思う。つまり、大量生産の時代に、勤勉で一定以上の能力のある高校生を10人、100人とまとめて雇用したかった企業と、毎年安定して企業に生徒を送り込める学校側の意思が一致していたのだ。
しかし、時代は変わったのである。どのような職種も、アイデアや人間力が求められる。現場から組織を変えてくれるような人材を、企業は血まなこで探している。そんな時代に制度がついてきていないのだ。あるいは就職時に何社も受けては落ちする生徒を傷つけたくないという先生方の優しさが制度として残されている源なのかもしれない。しかし、その優しさは社会では通用しない。生徒は、数カ月後には競争社会に放り込まれるのだから。

企業は、とくに中小・零細企業は、求人数をきっちり決めているわけではない。その時々の受注の具合、経営状態によって採用数が変化する。あるいは、よい人材がいれば将来稼いでくれると見込んで採用するし、何人に受けてもらっても、欲しい人材がいなければ採用できないってこともある。
学歴はさほど重要な要素ではなくなった。バイテリティがあり、やる気があり、おもしろい人物なら、大卒であろうと高卒であろうと関係ない。ボクは、今の日本なら、あるいは徳島なら、大卒よりも高卒の方がはるかによい人材がいると考える。
目的もなく大学に進んで4年間で「ダレてしまった」人間を軌道修正するのは難しい。ちゃらちゃらした22歳の大学生よりも、生き方に迷い、夢を語る18歳の高校生にはるかにシンパシーを感じる。文部科学省も、厚生労働省も、そんな高校生の就職活動の規制緩和をすすめ、より自由に就職活動できる環境をつくるべきだ。つくってちょーだい。新卒高校生が思いっくそ能力を発揮できる就職環境に早く近づけようぜ、お役人さん!