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2014年09月12日

滝と渓谷歩き。徳島人10月号 1410tokushimajin■滝と渓谷歩き
岩肌を伝うようにしなやかに流れ落ちる瀑布
段を成して連なり落ちる段瀑
遥か上方から迷いなく直線を描く直瀑
徳島の山峡で待ち受けるのは個性豊かな滝だった
■徳島駅物語
国有化、大空襲の焼失、戦後ヤミ市、百貨店の誕生
時代の変遷の中心に徳島駅はあった
■有料老人ホームとサービス付き高齢者住宅
■フルマラソン68歳の部全国ランキング1位・今津毬子さん

2014年09月11日

バカロードその73 夏にやってみたいろんなこと
文=坂東良晃(タウトク編集人、1967年生まれ。1987年アフリカ大陸を徒歩で横断、2011年北米大陸をマラソンで横断。世界6大陸横断をめざしてバカ道をゆく)

 長距離ランナーの1年は忙しい。先々の予定まで週刻みでびっしり埋まっているという点では総理総裁の上をいくかもしれない。
 だいたいシーズンオフという考え方がない。のべつまくなしに1年中走っている。
 200〜500kmの大会は春と秋に集中していて、その足づくりを目的に100kmを数本入れる。100kmでそれなりのタイムを出すにはスピード持久力が不可欠であり、ために冬期はフルマラソンに連チャンで出場する。フルマラソンを失速なく走りきるには心臓を追い込んでおく必要があり、空いた週に10kmやハーフの大会を差し込む。
 これらの予定をカレンダーに書き込んでいくと、休みなどまったくないことに気づく。
 短いサイクルでガンガンレースに出て、強くなっていくという川内メソッドは中高年には該当しない。脚のダメージを抜くにはフルで1週間、100kmで2週間、200km以上で3週間。これより短い間隔で走りつづけると、「超回復」に至る前に筋肉を酷使してしまうから、どんどん衰弱していく。踏ん張りの効かないぐにょんぐにょんの足で一定のスピードを出そうとすると、体力を著しく消耗する。
 結果、1年中疲労の抜けない精気に乏しい虚弱なオジサンが完成する。
 そんなマーク・ザッカーバーグ並みに忙しい長距離ランナーも、夏の間だけはしばしレースから解放され、練習に没頭できる。7月に突入し、入道雲が高い峰を築く日和になると、ようやくわが国においても酷暑対策に適した練習環境が整う。ベランダに置いた温度計が30度を超えると、気合いが入る。同じ「走る」という行為でも、気温10度と35度では別競技と言っていい。克服すべきポイントがまるで違うからだ。日本ではたった2カ月しかこの灼熱環境が得られない。真夏にどれだけ走り込めたかが、根拠なき自信を高められるかどうかにつながる。そう、高まるのは自信だけであって、競技能力ではない。
     □
【滝汗と手絞りしやすいシャツ】
 真夏は汗がドバドバ出る。弱い牛ほど汗をよくかくと言うが、ランナーも似たようなものだ。弱いランナーほどよく汗をかく。
 その典型がぼくである。10km走ると体重が2kg落ちている。20kmなら3kg減だ。走り終わって鏡を見ると、明らかに顔の輪郭がほっそりしている。少しうれしい。走る前にはなかった背骨の凹凸が、ゴツゴツと突起を現している。これもうれしい。体重62kgのうちの3kgだから、けっこうな比率である。しかし元メタボオヤジ代表としての歓びにひたっている場合ではない。長距離ランナーは、汗が流れ落ちてスリムになり老廃物もデトックスできてすっきり爽快、と簡単に受け入れてはならない。発汗にともなうデメリットの多さは枚挙を問わない。
 気温が上昇してくる春先のレースから汗かき地獄がはじまる。周りのランナーは誰も汗をかいてない序盤だっちゅうのに、バケツいっぱいの水をぶっかけられたくらい汗を垂れ流している。沿道のおばあさんには「すごい汗かいてるねぇ、暑くて大変やねぇ」と声をかけられる。「いや実はね、おばあさん。ぼくは今すごく汗まみれだけど、これは体質から来ているのであって、ものすごく暑くてバテてるからこうなってるのではないのですよ」と説明したいところだが、タイムに影響するので笑顔をふりまいて通り過ぎる。
 ある尊敬する先輩ランナーから視覚障害者ランナーの伴走練習会に誘われ、勇気をもって参加したい気持ちはやまやまなのに、自分の滝のような汗がガイドロープつたって流れていったり、パートナーにびしょびしょかかって、「うへぇ、こいつキモい」と思われやしないかと心配で、いまだに練習会から逃げている。まったく困った小心者である。
 シューズ内はカッポカッポと馬のひづめのごとく音を鳴らし、ずっしり重くなる。びしょ濡れのランニングパンツが発火点となってはじまる股ずれ吉原炎上。そして「自分はものすごく汗臭いのではないだろうか」との対人恐怖。なるべく他人の風上には立たないなどの配慮にも気を遣う。これでは走るどころではない。
 ランナーなら身体から水分が抜けない体質の方が良いに決まっている。汗とともに失われる希少ミネラル、壊れていく体温の恒常性機能。発汗と共に体調はどんどん悪化していく。
 画期的な汗止め対策はない。「多汗症手術」とネット検索してみたが内容を読んで怖くなってあきらめた。何をせずとも、9月になって秋風が吹き始めると汗はピタッと止まる。ならば夏は汗を100リッターかくものとあきらめ、「汗を絞る」方面に注力することにした。走りながらシャツをやおら脱ぎ、汗を吸って重量の増したシャツを二つ折りにして、ぞうきん絞りの要領でギュギュっと絞り、また着直すという原始的な方法だ。
 ひと夏かけて、所有する数十枚のランニングシャツで実験を試みた。そして、もっとも吸湿力が高く、さらに絞ったときに水分を排出しやすいシャツを見いだした。大会の参加賞でもらったノースフェース社のドライ系シャツだ。イチ、ニのサン絞りで、繊維内に蓄積された水分の9割方が落ちる印象。念のため重量を量ってみた。汗を吸いまくった状態で450gのシャツが、絞り終えると250gに落ちる。つまりシャツを絞るたびに着衣込み体重が200gずつ軽量化を果たしていくのだ。ま、それだけ脱水症状にも近づいてくってことだけど。
     □
【ジョグを封印する】
 ここで述べる「ジョグ」とは、疲れもせずどこまでも走れそうなペースのこと。キロ6分30秒〜7分あたりだ。このペースだとたくさん距離を稼げるので、自然と月間走行距離も伸びる。20km×25日で500kmだ。疲労もたいして残らない。
 そして危険な罠に陥る。少々ランニングをたしなんでいる方との定番の会話「最近は月間どれくらい走ってるんですか?」トークである。「500kmくらいですよ」と言うとたいてい「すごいですねぇ」と感心される。もちろん相手は心から「凄い・・・こやつは本物だ!」なんて感心しているわけではない。女子が交わす「髪切ったんだけどぉ」「カワイイィ〜!」くらいの意味のないコミュニケーションの潤滑油である。
 ところが、こちとらふだんから誉められ慣れてないから、「500kmも走ってたら無敵ですね」なんて言われると「オレは無敵なのかもしれない」と勘違いがはじまる。そして月間走行距離に裏づけられた絶大なる自信を胸にレースに臨み、早々のうちに実力を露呈してリタイア、を繰り返す。漫然とジョクペースで稼ぐ500kmに意味はないのである。
 今期は、練習を3タイプに分類し、いずれかの練習に特化した。
 1.10kmの全力走(キロ4分30秒前後)
 2.キロ6分の維持走(バテバテ疲労時のみ許す)
 3.100km以上のロング走
 練習の基本は10kmの全力走だ。といっても基本走力がのろいぼくは、夏場ともなると45分を切るので精いっぱい。ラスト2kmでペースアップを開始し、ラスト1kmは3分59秒以内で走る。土手のうえの一本道を、中年男がもたもたと回転の遅い足を懸命に動かし、取り憑かれたように走っている。すれ違う美ジョガーたちが、こちらの鬼気迫る表情を一瞬見ては目を逸らし、通り過ぎる。見てはいけない物を見てしまったかのように。ラスト200mは視野が狭くなり、脳みそが酸欠になって、地面が近づいてきたなと思うとバッタリ倒れる。
 これを月曜から休みなく続けていると、金曜にはフラフラになってくる。いちばんキツいのが朝だ。疲労が溜まりすぎて布団から起き上がれない。若者と中年の最大の違いは、若者=眠ったら体力回復、中年=寝起きが疲労のピーク、という結果に現れる。
 それでも無理に身体を動かして全力走をする。やがて1km走るだけでゼエゼエ呼吸が荒くなり、「ワタクシ、何のためにこんな事をやっているのでしょうか」との俗人的な心が芽生えはじめる。この感じ、超長距離レースの中盤以降に近い。エネルギー切れや脱水を起こした後に人格崩壊がはじまり、リタイアする理由を100個ほど並び立てて投げ売りセールをはじめる頃の。
 長距離ランナーにあるまじきクサレ外道な人格と化した後に、キロ6分台で走れるだけ走り続けるってのが「キロ6分の維持走」。もはやこの歳になって人格を高潔ポジティブなのと入れ替えるのは無理。ダメ人間でもキロ6分台キープできる能力をつける現実的選択をするのだ。
 そして100km以上の長距離走を月に1〜2本を行う。100km以上走るとやってくる悪魔たち・・・極限の疲労や眠気、足の激痛は、50km走や70km走では再現できない。キロ7分ペース×50km走を何本こなしても、200kmレースの練習には少しもならない。苦しさの次元が別物だからだ。
 この3タイプの練習はいずれもとっても苦しくて、「ジョクペースでファンランニング」という場面がない。10km走中心だから、月間走行距離も伸びない。100km以上ロング走を2本入れて、ようやく月間500kmあたりに達する。息も絶え絶えの500kmだ。これでも実力つかんか!と夏空に叫ぶ。こんだけ努力してるんだから、走力ついてくれよ!
     □
【ウルトラライト・パッキングを極める】
 2日以上かけて100kmを越えて走るときのために、荷物の最軽量化に取り組んだ。
 荷物を持つのが嫌いなのだ。バックパックなんてなければどんなに軽快に走れるだろうか。
 にも関わらず長距離のレース前には、あれも必要、これもイザって時のために持っておこうと、どんどん持参物が増え、最終的には両肩にずっしり食い込むほどに荷が膨らむ。しかし、レースが終わって荷片付けをしていると、実際には使わなかったモノだらけだって気がつく。バックパックの容量の70%は不要品で占められているのだ。
 考え方を変えてしまうことにした。雨が降ったときのためのウインドブレーカー、マメができたときのためのテーピング・・・など「何々が起こったときのための」との予防措置的なブツはすべて除外するのだ。こちとら山岳レースに出るわけじゃない。どんなに長くとも20km以内にはコンビニや自販機がある近代日本の一般道を走っているのである。必要な物は店で入手すればよいのだ。
 思想的には、着ている服とシューズ、現金以外は何もいらない、という所まで追いつめたい所だが、文明人として若干の利便性は確保したい。今のところの極限のウルトラライト・パッキングは以下だ。
 ウエストバック+点滅ホタル
スマホとスマホ充電コード
 ヘッドランプ
 健康保険証
 電子マネーカード
 現金(自販機用)
 それぞれを小分けする防水用ビニル袋
 ・・・以上だ。
 着替えは持たない。着ている服が臭ってきたら、公衆トイレの個室にこもり全裸になってシャツ、パンツ、ソックスを洗う。手絞りしたらそのまま着て、太陽の下に走りだせばすぐに乾く。ビジネスホテル泊まりなら、チェックイン後すぐにホテル備品の浴衣やパジャマに着替えて、衣類はランドリー室に直行。
 予備の電池や薬品は持たない。必要な場面で少量ずつ買う。歯磨きはあきらめる。これで総重量350グラム。ウエストバックは玄関脇にぶら下げておいて、いつでも旅に出られるようにしておく。この夏は、九州縦断、四国横断、北海道縦断とロング走を繰り返す。
     □
 2014年の夏は、後がない夏である。死ぬ気でやって結果を出さなければならない。世は科学トレーニング全盛だが、ぼくら世代は、幼少期に見た「侍ジャイアンツ」「あしたのジョー」「キャプテン」でもってすくすくとスポーツ脳が細胞分裂した。弓矢をバットで打ち返し、蛇口を針金でぐるぐる巻にし、3分の1の距離ノックでボロボロに。根拠なきハードトレーニングが栄光へと続く唯一の道だと刷り込まれているのである。
 
バカロードその72 どんな富豪でも味わえないぜいたくな旅なんだな 〜土佐乃国横断遠足242km・後半戦〜
文=坂東良晃(タウトク編集人、1967年生まれ。1987年アフリカ大陸を徒歩で横断、2011年北米大陸をマラソンで横断。世界6大陸横断をめざしてバカ道をゆく)

 田園の一本道をトコトコと進む。このあたり標高200m以上の高台ながら、満々と水を湛えた水田が山あいの台地に広がっている。昼間の温暖な空気と、夜間の冷え込み、寒暖差を利用して栽培される仁井田米(にいだまい)は独特の香りとモチモチ感で知られている。
 走りはじめて2日目の昼。ピーカン青空の下に三角屋根の連なりが見えてくる。153kmの「クラインガルテン四万十」だ。ここは滞在型の農園体験施設であり、牧歌的な雰囲気がヨーロッパの農村を思わせる。
 施設の入口で大会スタッフが大きな身ぶり手ぶりで応援してくれている。前後にはランナーの影は見えない。1時間に1人来るか来ないかのランナーをずっと待ちかまえてくれているのだ。
 到着すると、スタッフの方が「まずはお風呂にしますか、それともお食事になさいますか」と冗談めかして笑う。「食事はこの中から選んでください」と手渡されたA4用紙には、豚の生姜焼き、豚のしゃぶしゃぶ、納豆玉子かけ丼、豚汁など数種類のメニュー名が並んでいる。「いくらでも食べたいだけ注文してくださいよ。何品でもつくりますから」。シャワーを浴びている間に、料理を作っておいてくれるというのだ。
 50kmあたりから吐き続けているので、何も喉を通らないかと思っていたが、メニュー表を眺めているうちに、かすかに食欲が戻ってくる。お言葉に甘えて、生姜焼き、野菜サラダなどをお願いする。ウルトラランニングってのはときどき理解できない現象が起こる。スタートから50kmぽっちでボロボロになったのに、そこから100km走った後には体力が回復してるってね。いったい限界ってなんだろう。肉体の限界ってのは実は死ぬ寸前まで酷使しないと訪れるものではなくて、たいていの「もう限界だ」は脳や心に備わったブレーキ装置なんだろう。
 シャワーブースに入ると、直立した姿勢がつらい。服を着たまま床にベタッと座り、手を伸ばしてシャワーコックをひねる。髪の毛にシャンプーぶっかけて、流れ落ちる泡でシャツ、パンツ、ソックスを洗う。入浴と洗濯をいっぺんにやっつけて時間短縮する技は、アメリカ横断レースの際に先輩ランナーから教わった。ステージレースの最中に、1分でも長く睡眠時間を確保するために有効なテクニックだ。たしか毎日死ぬ思いで走ってたはずなのに、楽しい思い出しか残ってない。
 湯上がりのジャストタイミングでほっかほかの料理ができあがっていた。聞けばお肉は「窪川ポーク」という地元の名産品。味の決め手であるタレに擦り込まれたニンニクも四万十町の特産品だとか。肉厚のポークからは肉汁がじゅわーっとしみ出し、甘い脂肪分が舌上で溶けていく。得も言われぬ美味さとはこのことか。もちろんご飯は、豊潤な香り匂い立つ仁井田米。
 この大エイドには仮眠所も用意されているが、いかんせん到着したのが真昼だったため眠気が起こらず、後ろ髪引かれながらあとにする。出発する際には、ラップでくるんだおむすびや梅干しを持たせてくれた。滞在した1時間の間、何人ものスタッフの方に手厚く面倒をみていただいた。
      □
 ゴールまで残り89km。次の大きな街は46km先の四万十市だ。中村街道と呼ばれる国道56号線を南下し、ループ状の急な下り坂を経て、黒潮町佐賀という土佐湾沿いの街に出る。入り江と岬が複雑に入り組んだ海岸ロードでは、屏風状に繰り返し現れる岬を登り、漁港のある街道へと下る。何度も登り、何度も下る。
 日没後はまた眠気との戦い。暖かかった昨晩とは一転、今夜はひときわ寒く身震いがくる。短パン、半そでシャツではたまらず、コンビニで上下の雨ガッパを仕入れて着込む。しかし通気性のないカッパでは、内側にしたたる汗が衣類を濡らし、外気に冷やされて余計に寒い。奥歯のガチガチが止まらない。
 そういえば以前このあたりを旅したときに、四万十市郊外にあるスーパー銭湯を利用したことがある。そこに着いたら汚れた身なりは気にせず突入しよう。まずは水風呂に飛び込んでアイシングしたら、温かい寝湯で横になって1時間くらいウトウトしようじゃないか。風呂あがりには生ビールをぐいっといくのもよい。名案だ、まさに名案だ。新たな心の拠り所を見いだして、気力体力ふたたび満ちあふれる。
 夜の11時前、樹林帯が開けるとバイパス道の彼方に四万十市の街の光がきらめいている。いくつかの交差点を越えると、前方に「平和の湯」の大きな電飾看板が神々しく現れる。「やっと眠れる、温まれる。ヤッタヤッタァ」とガッツポーズを二度三度。生ビールもよいけど、ソフトクリームや練乳がけのかき氷もいいかも、とスイーツへの欲望もうなぎ登り。
 温泉まで信号をあと3個と迫った頃、キラキラまばゆく輝いていた看板の照明がフッと消える。いったい何が起こったのか・・・は徹夜二日目のボケ頭でもすぐわかる。このタイミングで営業終了時間ってわけかよう。湯の香ただよう温泉駐車場の前をぼうぜんと歩く。忘れていた眠さと寒さが絶望とともにやってきてケタケタ笑っている。
 ここから明け方まであまり記憶がない。半分眠りながら歩いていたと思われる。四万十川のいちばん河口に近い四万十大橋たもとが202km地点。深夜12時、日本一の清流が大地を潤す光景は、真っ暗で見えはしない。橋を渡り終えると、足摺岬の先端にある霊場・金剛福寺までの道しるべが至る所に掲げられている。四国八十八カ所をめぐる遍路道のメインコースに出たんだろうか。
 バス停のベンチに膝かけ用の毛布を見つける。試しに首からかけてみると腹までしか届かない。だが体育座りになると足首まで覆える。体温が毛布に伝わり温かさに包まれると、この旅はじめての本格的眠りに落ちる。次に目覚めた時には、朝もやの奥にモノクロームな海辺の街が薄ぼんやりと佇んでいた。深い深い睡眠は、疲労の粒を鼻の穴から煙のように放出してくれた。ラスト30km、ぼくはまだ走る気力を残している。
 三日目の太陽はやっぱり凶暴で、照りつけられた森の木々は、これ以上の緑はないという濃い緑を放っている。海を隔ててゆるいカーブを描く陸地の果てに足摺岬らしきこんもりした岬が見えてくる。
 コースは車道を離れ、雑木林の細い遍路道をゆく。力強い日射しは枝々に遮られ、木漏れ日となって地面にたくさんの光の輪を描く。 鳥のさえずりと、山肌をつたう清流の音が耳に心地よい。
 ときおり小さな集落が現れる。多くの家は広い庭に菜園を備えている。ビワや柑橘類の果樹がたわわに実をつける様は、家庭菜園と呼ぶには立派すぎる。オレンジ色に熟れたビワの実は、門塀をはみ出して歩道上にせり出している。1個むしり取って味見したい欲望にとらわれる。いや、ゼッケンナンバーをつけて走っている手前、軽犯罪行為は慎まねばなるまい。いい歳したオッサンがくだもの泥棒で起訴されるのも恥ずかしい。
 ふと見ると、足下にビワが落ちている。1個だけではない。道路のあちこちにころりころりと転がっている。熟れすぎて自然落下したものであろう。落ちているものなら食べても犯罪には当たらない(と勝手に解釈する)。
 1個拾って皮をむくと、指先から果汁がしたたり落ちる。果肉を口に含めば、高濃度の砂糖水よりも甘い。出荷用に早摘みされたものではなく、実が落ちる寸前まで太陽光を浴びたビワって、こんなにも美味いのか。落ちているビワを手当たりしだいむさぼり食う。
 急斜面のへりを切り取った道路には、山側の崖からゴウゴウと山水が降り注いでいる。山水をパイプやホースで道沿いまで導いている場所が何カ所もある。お遍路さん用の水場なのだろうか。水の吹き出し口に頭を突っ込み、天然シャワーを浴びる。体温、5度は下がったね。
 足摺岬まで5km、4km、3kmと距離表示の看板がカウントダウンをはじめる。楽しい走り旅が終わろうとしている。
 岬の先端まであと200mに迫ったところで、前方にランナーが見える。足をひきずって、歩くよりも遅いスピードで、それでも走っている。100kmほど手前で追い抜かれた長井さんだ。UTMF、萩往還、そして土佐之国と1カ月の間に3連走している彼は、足の裏半分を覆う巨大マメに悩まされていた。見てるだけでもエグいのに、よくここまで来れたものだ。すごい根性である。
 そして、われわれ以上に不眠不休でランナーを支えてくれた主催者の田辺さんが、ジョン万次郎像の横で、白いゴールテープを持って待っている。観客は、そこら辺の土産物店か観光案内所のおっちゃんとおばちゃんが2人。十分である。
 長井さんのゴールシーンを感慨をもって見届け、いよいよ自分の番だが・・・どうだったかあまり覚えていない。だいたいゴールシーンって、自分以外の人のを見学するのがいちばん良いもんです。
 ゴール後は、ランナー1人1人を車に乗せ、岬の高台にあるリゾートホテル「足摺テルメ」に送ってくれる。汗まみれ泥まみれで入館するには躊躇する建築美のここは、太平洋を一望する立派なスパを備えているのだ。「お風呂から上がったら電話してください。迎えに来ます」。そんなVIP扱いしてもらっていいのかなあと恐縮する。
 宿舎に戻ると、1人に1皿ずつの尾頭つきのタイと刺身の盛り合わせ、山盛りのカレーライスが待ちかまえていた。飲み放題の生ビールを5杯あおったところで、べろんべろんに酩酊。畳敷きのお部屋で大の字になれば、そよ風が頬を撫でる。睡眠不足な脱水症状者だけが味わえる幸せに満たされる。
    □
 100kmを超えるマラニック、ジャーニーラン系の大会といえば「ランナーの自己責任」が徹底されるのが通常である。徹夜続きで公道を走るからには、事故防止や体調管理は誰に頼ることなく自分で対処すべきなのは当然である。大会主催者や世話役の方に依存的な気持ちでいる人は参加する資格がない、とぼくは思う。
 しかしながら「土佐乃国横断遠足」は、大会スタッフの「世話の焼いてくれっぷり」がハンパなかった。ランナーの健康管理や地域色あふれる食事、参加者事情にあわせた大会前後の送迎など、さまざまな場面で人間味溢れる対応をしてもらった。そこには、高知という独特の県民性がバックグラウンドにあると思う。陽気で、開けっぴろげで、酒飲みで、世話好きな土佐人の気質が全開なのだ。
 242kmもの距離を走るのはもちろんラクじゃないけど、「土佐乃国横断遠足」は、競技性とは正反対の、長い走り旅を楽しみたい向きには打ってつけの大会だ。100kmウルトラを経て、「もっと長く走ってみたい」「100kmの先には何があるの」と興味をもった人の初トライの場として大絶賛おすすめします。

2014年09月10日

タウトク・CU・徳島人8月号 実売部数報告月刊タウン情報トクシマ8月号、月刊タウン情報CU8月号、
徳島人8月号の実売部数報告です。

タウトク8月号の売部数は、6,626部
1408_タウトク部数報告.pdf

CU8月号の売部数は、4,152部
1408_CU部数報告.pdf

徳島人8月号の売部数は、3,800部
1408_徳島人部数報告.pdf
でした。

詳しくは、リンクファイルをクリックしてください。
メディコムは、「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU」「徳島人」「結婚しちゃお!」「徳島の家」の実売部数を創刊号から発表しつづけています。

雑誌の実売部数を発行号ごとに速報として発表している出版社は、当社以外では日本には一社もありません。実売部数は、シェア占有率を算出し、媒体影響力をはかるうえで最も重要な数値です。他の一般的な業界と同様に、出版をなりわいとする業界でも正確な情報開示がなされるような動きがあるべきだと考えています。わたしたちの取り組みは小さな一歩ですが、いつかスタンダードなものになると信じています。
結婚しちゃお!夏号 実売部数報告14夏号_結婚しちゃお!部数報告書.pdf

結婚しちゃお!夏号 実売部数報告です。
結婚しちゃお!夏号の売部数は、411部でした。
詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。

長らく雑誌の実売部数はシークレットとされてきました。雑誌は、その収益の多くを広告料収入に頼っているためです。実際の販売部数と大きくかけ離れ、数倍にも水増しされた「発行部数」を元に、広告料収入を得てきた経緯があります。メディコムでは、その悪習を否定し、「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU」「徳島人」「結婚しちゃお!」「徳島の家」の実売部数を創刊号以来、発表しつづけています。

2014年09月04日

ちゃんと知っておきたい知識!さらら9/4号 tokushima-140904salala■家族・知人が目の前で倒れた時、どうすれば?
○「救急車が到着する前」が大事な症例&応急処置について
■理想のふきんがあったわよ〜!
じめじめ、拭いたら水分のスジが残る、なかなか乾かん…台ふきの悩みが解決?
■子どものおもちゃ収納、必殺ワザ
■不器用さんもOK!のTシャツ切るだけアレンジ術
■実は得?ちょっとお高い調味料

2014年08月30日

あなたはどっち派?さらら8/21号 tokushima-salala140821■徳島県民のスタンダードってどうなん?
あなたはどっち派?-2014夏編-
お風呂、運転中、おにぎりなど日常の暮らしにおける6つのテーマでアンケート
■わが家のホームセンターお買い物日記
ホームセンター好きの女性がこの夏1カ月に購入したもんを公開
■冷凍テクで楽ラククッキング
■シュワシュワ気持ちいいわ〜、炭酸ミスト
■あせもにいい?「これええわ〜」なクリーム


2014年08月25日

公園×食べ歩き王。タウトク9月号 tautoku1409■とくしま公園案内
絶叫系滑り台、個性派タコ型滑り台、巨大アスレチック、じゃぶじゃぶ池、見晴らし抜群の遊具など徳島県内と淡路島の公園60カ所。今すぐ出かけたくなるスポット満載です。
■徳島一食べ歩きをしているタクシードライバーがオススメする店
中華そば、中華・台湾料理、うどん、洋食、和食、居酒屋など、徳島の「食べ歩き王」が太鼓判を押す飲食店、50軒を紹介。

2014年08月11日

新しい料理店の気になるメニュー100。CU9月号 tokushima-cu1409■とくしまのあたらしくておいしいお店が大集合!
特集 新店美食100
ふわもちのベーグルサンド、アメリカンスタイルサンドウィッチ、うな重、阿波牛のグリルステーキ …

■徳島女子を徹底調査!
特集 女性の給料とフトコロ事情
月給は?貯金は?ボーナスは?ヒトにはなかなか聞けないリアルなマネーの話

■女磨きアラカルト[きゅん∞]
優秀コスメ Pick up、アーユルヴェーダーを体験、半顔メイク …

四国の絶景。徳島人9月号 1409tokushimajin■四国の絶景
標高1982mの石鎚山から見晴らす眺め
吉野川から生まれた雲海の姿
窓一面の夜景を堪能できるお宿
■食材と理念から店を選ぶ
アレルギーに対応したケーキ
天然酵母と国産小麦で作るパン
野菜を中心としたマクロビオティック料理
■トクシマ流儀
■大切な愛車のケア・メンテナンスショップ

2014年08月07日

タウトク・CU・徳島人7月号 実売部数報告月刊タウン情報トクシマ7月号、月刊タウン情報CU7月号、
徳島人7月号の実売部数報告です。

タウトク7月号の売部数は、7,526部
1407_タウトク部数報告.pdf

CU7月号の売部数は、4,564部
1407_CU部数報告.pdf

徳島人7月号の売部数は、4,290部
1407_徳島人部数報告.pdf
でした。

詳しくは、リンクファイルをクリックしてください。
長らく雑誌の実売部数はシークレットとされてきました。雑誌は、その収益の多くを広告料収入に頼っているためです。実際の販売部数と大きくかけ離れ、数倍にも水増しされた「発行部数」を元に、広告料収入を得てきた経緯があります。メディコムでは、その悪習を否定し、「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU」「徳島人」「結婚しちゃお!」「徳島の家」の実売部数を創刊号から発表しつづけています。
夏本番をどう乗り切る?さらら8/7号 tokushima-0807salala■人前でちょっと食べるとき悩むもん、どーやって食べたらええん?
竹ちくわ、魚の姿寿司、スイカ…徳島のもん、夏のもんをスマートに
■簡単でかわいいじょ!「ある素材」で気軽に楽しむ観葉植物
■今ちゃんと知っときたいマダニのこと<最新版>
徳島にいる種類とは?予防策はあるのか?咬まれたらどうしたら?
■夏は涼めるイベントでクールな時間を過ごす


2014年07月29日

ブライダルフェア密着取材。結婚しちゃお!秋号 kekkon■女子カメラが潜入!ブライダルフェア
模擬挙式や模擬披露宴、ドレス試着、婚礼料理の試食会など人気フェアの全貌を編集部が明らかにします。
■婚約&結婚指輪100
徳島人気ジュエリーショップ選りすぐりのリングをご紹介。
■ゲストが喜ぶ披露宴の演出100
仰天サプライズからおもしろアイデア、涙・涙の感動演出までたっぷりお届け。

タウトク8月号特別ふろく「徳島冒険王」 boukenou本日発売のタウトク8月号には、徳島の夏を遊びたおせる特別ふろく付き!

★2014阿波おどりガイド
チケット購入から踊る阿呆になる方法まで、阿波おどりを10倍楽しめる情報満載。
★徳島が誇る夏グルメ
夏の宴会にオススメのお店、食べ歩きたい徳島ラーメン、行列のできる有名店など、ハズさない徳島グルメを紹介。
★徳島の注目のレジャー&グルメスポット
人気の遊びスポット、アウトドアスポーツ、最旬ファッションなど、夏あそび情報をしっかりカバー。

2014年07月28日

徳島の夏を遊びたおそう! ふろく本「徳島冒険王」付。タウトク8月号 1408_tautoku.jpg■夏あそび計画100
レジャー、味覚狩り、花火まつり、イベント情報、今夏OPENした新店…暑さも味方にして遊びの達人になるべし!

■ふろく本「徳島冒険王」
徳島のラーメン、夏グルメ、2014 阿波おどりガイド、夏アイテム、注目スポット。これさえあれば夏のおでかけ計画はばっちり!

2014年07月17日

デザート系フローズンドリンク作ろっ!さらら7/17号 tplishima-salala717■デザート系フローズンドリンク、作ってみん?
飲めばおなかも満足?デザートのようなドリンクをお家で
■ハッカ油で夏をCOOLに!
エアコンを使わない主義の母が伝授する避暑術はこれ!
■冷凍したペットボトルで熱帯夜もぐっすり
■冷凍テクでラクラククッキング
■スリッポンが今流行の理由

2014年07月11日

四国列車の旅。徳島人8月号 1408tokushimajin■四国のローカル鉄道をのんびりと列車の旅
JR四国の観光列車「伊予灘ものがたり」、7月スタート
全国からファンを集める予土線のホビートレイン三兄弟
伊予鉄の「坊ちゃん列車」で城下町めぐり
ことでん三路線に揺られてローカル町探訪
高知の路面電車・土電でノスタルジーを味わう
■訪問介護とデイサービス
■中高年の終活はじめ
■夏の個別指導塾ガイド
海辺でゆるり×島カフェ案内。 tokushima-cu1408海辺でゆるり×島カフェ案内。CU8月号
■波音をBGMに美味しい食事とソト遊び
特集 週末、夏ドライブで。海辺でゆるり
■淡路島>>>30分でいける別天地
特集 島カフェ案内
■もっと可愛くなる方法伝授[きゅん∞]
女磨きアラカルト
■ラブホDEデート

2014年07月08日

バカロードその69 右の道と左の道。この道をゆかば、どうにでもなるさ!
文=坂東良晃(タウトク編集人、1967年生まれ。1987年アフリカ大陸を徒歩で横断、2011年北米大陸をマラソンで横断。世界6大陸横断をめざしてバカ道をゆく)

 さあさ皆さんジャーニーランの季節到来ですよ。春の日ざしは荷物を軽くし、凍える野宿の夜からぼくたちを解き放ってくれます。冬枯れの森を季節の花々が週替わりで彩色しはじめます。
 側道わきの山肌では、誰かが据えつけた建材用パイプ口に雪溶け水が噴き出しています。「あてどなき旅」という言葉が頭から離れません。バックパックに最少限の荷物を詰めこんで、名も知らぬ街や野まで走っていくのです。
 最近は、よほどの山奥に入らない限りコンビニやスーパーがありますから、野宿さえ回避するなら、ほぼ空身で走り旅に出られます。思い立ったらすぐ出発できるよう、バックパックを装備完了状態にしておきたいものです。
 ゆく先定めぬフーテンラン用にぼくが準備している用具はこんなとこです。

【照明具】
ハンドランプ(ロードバイクのハンドルバーに取り付けるもの。指にはめて指輪みたいに使うと握力不要で楽ちんなのだ)
ホタル(背後から迫るクルマ警戒用。大会の参加記念品でもらった派手めのLED点滅の)
ヘッドランプ(薄暗いのしか持ってないので、夜釣り用のルーメン最強なのに買い換えたい)
【充電ケーブル】
ガーミン用、スマホ用
【薬品】
鎮痛剤(ロキソニンの大量投下は内科的に危険なので、イヴクイックがほど良い)
絆創膏(おっぱい用が外れたときの予備として)
胃腸薬(ガスター10ことH2ブロッカー。市販薬では横綱クラス)
ワセリン(股間に優しいヴァセリンペトロリュームジェリー100g。持続効果あり)
【その他】
ガーミン910XTJ(説明書どおり本当に20時間持つ。重宝してます)
小さいビニル袋(小銭入れとして、また豪雨時のスマホ防水など用途幅広し)
安全ピン(1個あれば十分。足のマメをザクザク裂くために)
現金(最後は金が物を言う。金さえあれば世の中どうにかなる。金がなければ世の中どうにもならない)
スマホ(特に誰からも連絡ないけどね)
カード類(健康保険証、電子マネーカード、クレジットカード。カードさえあれば世の中どうにかなる)
【ふつう持ってそうなのに、持たないもの】
ハイドレーションパックとか水筒とか(山水か自販機があるってことで)
雨具(濡れたら濡れたであきらめる)
着替え(シャツやソックスの替えは、オシャレさを問わなければ山村の古い雑貨店で売ってるので十分)
地図(適当に走るので)
コンパス(昼間は太陽の方向、夜は星座の動きで代用する)
食べ物(最悪お店がずーっと現れなくても、山には果実や木の実がありんす)

 着の身着のままとまではいかないけど、バックパックの総重量は1kg程度に収まります。1kgなら空身とほとんど変わらない。
 荷物にも、行き先にも束縛されない。職場や親戚や檀家やPTAや、あらゆる人間関係から解き放たれて、名刺を持たない無名のフーテンとなる。目的もなく地上を徘徊する、おかしな人物になれる。バス停のベンチで仮眠してたら、お巡りさんの職質も受けることもあるけど、日本人です!と堂々と答えればよい。戸籍票と住民票は間違いなくこの国にある。ぼくたちの自由を抑圧する法はない。
     □
 春うらら。中年徘徊ランナーが眠りから覚める季節は、同時に主要な長距離レースの参加日程を組む時でもある。今年はこんな大会にエントリーした。
□4月、さくら道国際ネイチャーラン/250km・36時間
 名古屋城から金沢兼六園までの250キロという距離もさることながら、36時間という制限時間の厳しさ、累積標高差4500m、参加選手のレベルの高さと、いずれをとっても国内最高峰の超長距離ロードレースと言える。平凡ランナーにとっては出場すること自体がほとんど無理なハイクオリティー大会だが、今年は参加枠を120人→140人と20人増やしてくれたおかげか、マグレで出られることになった。ありがたやー。
□5月 川の道フットレース/520km・132時間
 東京葛西臨海公園から長野善光寺を経由し、新潟市へと至る遙かなる道。1740mの三国峠越えはひとつのハイライト。ワンステージレースであるが仮眠所が3カ所設けられているランナー想いの優しい大会。幻覚、幻聴、象足、生爪はがれと、フットレースの醍醐味をフルラインナップで満喫できる。
□6月 つるぎのめぐみワイルドウォークハードシップ/115km・2日間
 徳島県南部を流れる那賀川河口、海抜ゼロmから西日本第二の高峰・標高1955mの剣山頂上へと向かう。初日はロード、2日目は登山というユニークな趣向。今年初開催。
□6月 土佐乃国横断遠足/242km・60時間
 高知県の室戸岬から足摺岬まで土佐湾をぐるっと廻る。中岡慎太郎像をスタートし、桂浜の坂本龍馬像を経由して、ジョン万次郎像にてゴールという維新好きにはたまらないコース設定となっている。これまた今年初開催。
□7月 鳴門海峡・愛媛県佐田岬横断(練習会)/294km
 スパルタスロンの模擬試験として行う。スタート時刻、関門設定を本番同様にする。気温急上昇するスパルタスロンの予行演習は、日本ではクソ暑い夏にしか行えない。練習の総仕上げ。ここでヘバるなら本番は赤信号。
□8月 トランスエゾフットレース/1100km・14日間
 1日平均78km走るステージレース。真夏の北海道、地平線までつづく1本道をゆるりゆるりと前進する。長期間のステージレースとして、不定期・単発ではなく毎年開催される大会は、国内では稀有な存在。2週間もの間、走ることしか考えなくていいランナーにとっては夢のようなひととき。
□9月 スパルタスロン/247km・36時間
 ギリシャ・アテネのパルテノン神殿前からスパルタ・レオニダス像まで、2500年前に戦士が駆けた道をたどる。80キロ関門までのスピード、直射日光に焼かれる高温かつ乾燥した気候、1200メートルの岩山越え、徹夜からレース後半の耐久マッチ・・・と超長距離ランナーが持ち合わせるべき全ての要素を高次元で求められる大会。

 これら大会の合間に100kmレースを数本入れ、スピードを養おうって魂胆。
 なーんてね、計画立ててるときだけだよね楽しいのは。頭の中で予定を組み立てたり、飛行機や宿の予約サイトを眺めて、あれやこれやと悩んでいる時間はこよなく愉快。これって鉄ヲタで言うところの「時刻表ヲタ」なんかもね。お楽しみは机上で終わり。
 いざレースに出て走りだすと後悔の荒海。こんな苦しくてつらい事の積み重ね、自分に向いてるわけないし〜。温風乾燥機をほどこした羽毛布団にくるまりたいとか、源泉かけ流しの湯に首まで浸かりたいとか、現世利益の強慾に捕らわれるばかり。
 元々、スピード出して走るのが苦手なうえに、耐久フェーズにも弱い。徹夜ランニング中の走りながらうたた寝は茶飯。明け方まで仮眠処を求めて工事現場のプレハブ小屋や神社の引き戸をガタガタまさぐり、不法侵入を試みる悪だくみに終始。
 こんな自分が名だたる長距離レースに参戦して、人並みに完走を目指すというのは、根本的に方向性を間違っているのかも。
 100kmを7時間や8時間台で走り、24時間走で200kmを軽くクリアするようなランナーたちは、ぼくにとっては皆スーパースターである。ウルトラマラソンをはじめた頃は、彼ら業界のスターたちと肩を並べてスタートラインに立てることが快感だったけど、レースのたびに絶望的リタイアを繰り返してると、「こりゃぼくの居場所じゃないのかも」と切なさに包まれる。
 今年ダメなら競技的なレースからは足を洗おうと毎年のように決意しながらズルズル。チンピラ男に惚れてしまい、殴られ蹴られ金ヅルにされながらも、時折見せる優しさにほだされて、縁を切れない女のサガみたいなもの。もう終わりにしたい、でも愛されたいし、愛してるの私。
 自分の能力、走力はわかっている。場にふさわしくないのも理解しているのだが、もう1年だけやらせてください。「完全にやり切った」と納得できるだけの練習と準備をして、ダメなんだからダメなんだもんと100%自覚したいのです。これ以上のことはできません、細胞の残りひと粒まで絞りきったのです、と確信して終わりたいのです。
 ってことで、シャニムニ練習している。この道をゆくには、熱血スポ根マンガに登場する魔球・必殺技系に類する奇策はないのである。ふり返れば過去5年、奇策奇行に頼りすぎた。20kgの米を背負って崖を登ったり、インターバル走のつなぎにカルピスソーダ一気飲みを入れたり(胃を鍛えようとしたのです)。スピード強化策は箱根ランナーの模写。宇賀地強の空中滑空ラン、大迫傑の異次元の走り、服部翔太のターミネーター顔。中央大学・塩谷潤一のガムシャラ走にはハマりました。もちろん走力の向上には無関係ですけど。
 奇策に頼り失敗すると、また別の奇策があるのではないかと、逃げ道の存在を認めてしまう。だから今シーズンは、よく鍛えられた総務部の経理マンのように、突飛なことをせず、目的を達成するために地道な積み重ねをします。
 あまたのアスリートと同じ土俵に立とうとするなら、練習量を増やすしかない。少なくとも1日20km、レースを含めて1カ月700km以上は走る。これでも甘いと言えば甘いけど、まともな社会生活を送るにはほぼ限界数値。
 よく走り、たくさん食べる。ボウル一杯の野菜をバリバリ食らう。今まであまり摂取しなかった肉もむしゃむしゃ食らう。イミダペプチド鶏ムネ肉ね! アイスクリームとチョコレートのみの偏食生活を悔い改め、よく走れる身体にプラスとなる食材はガンガン胃に放り込む。
 よく走り、よく食べたら、たくさん寝る。時間があればあるだけ眠る。睡眠が深いほど翌日の練習をちゃんとこなせる。天賦の才なき人間が、日々20km、30kmの練習を積み重ねずして、100kmや200kmがこなせるだろうか。無理に決まっておる!
 よく走り、よく食べて、よく寝る。半年間これを繰り返して、それでも結果(スパルタスロン完走)を出せなければ、元のBMI30超級なメタボ中年に戻ろう。なにごとも中途半端はつまらない。絞りきって死ぬか、肥え太って死ぬか。中肉中背はイヤだ〜!
バカロードその68 ポジティブシンキングは止めなさい!
文=坂東良晃(タウトク編集人、1967年生まれ。1987年アフリカ大陸を徒歩で横断、2011年北米大陸をマラソンで横断。世界6大陸横断をめざしてバカ道をゆく)

 採用面接の季節は、不思議な気持ちになる。
 みず知らずの学生さんたち。どこの馬の骨がいかなる魂胆でやっているかもわからない会社にやってきては、ここで働きたいと言う。ぼくがどんな怪しい信仰をもち、空中浮遊ができたり、縛られたり猿ぐつわされるのが大好きな人かもしれないのに、働きたいと言ってくれる。
 ありがたいことである。
 アカの他人様が20余年もの間、手塩にかけて育てた大事なお子さんである。なるべく不幸な目にはあわせたくない。だが残念なことにわが社は、毎日17時に終業しアフターファイブを満喫できる職場ではない。東京は神田神保町界隈の雑居ビルの片隅あたりに入居する、所帯ひもじい零細出版社の経営環境と大差ない。鬼ヅラ上司の罵声を浴びながら、いつ果てるとも知らぬ仕事の山に追われ、風呂に入る時間もなく、すえた体臭の臭いが充満する事務所で真っ白な灰となっていく、ジョ〜! 今どきの社員にやさしい会社とは違うのである。
 面接タイムは、そのような劣悪環境について、ぼくから一方的に説明する時間帯に占められる。自己卑下説明会である。
 ところが学生さんたら「そんなに正直に何でも話してくれる会社って今までなかったです!面白いですね!」などと目を輝かせはじめている。
 おい君、ポジティブシンキングは止めなさい! ぼくは冗談で言っているのではないのだよ。あえて自分を貶めて親しみやすい雰囲気を作ろうなんて人心掌握術はないのだよ。夢見がちな君の誤解を解き、現実というものをお知らせするために、全速力でプレゼンしてるんだ。
        □
 夢見るうるつや就職活動生と、お肌カサカサの枯れ果てた中年社会人の会話は、いささかコントのような情景を描くきらいがある。学生さんの期待する解答を述べてあげられないへそ曲がりな自分を憎しむ。地球上で一番たくさんのありがとうを集める会社にしたい、くらいの大見得を一度くらいは若者の前で切ってもみたくはあるが、後の説明がつづかないのでやめておく。
 そして春になると、憂鬱でこっけいな質疑応答の応酬な日々がつづくのである。こんな感じで。

Q 新人研修はどんな内容ですか?
A 研修ありません。仕事は現場で覚えてもらいやす。

Q 休みはちゃんと取れますか?
A 仕事をパッパと終わらせた人は休めます。

Q 社訓ってありますか?
A 社内は貼り紙禁止なので、ないです。

Q 会議は多いですか?
A よほどの事件がない限りしません。

Q どんな福利厚生がありますか。
A カップ麺、お菓子、ジュース、食べ放題&飲み放題。

Q 儲かっていますか。
A あまり・・・。

Q 新人歓迎会はありますか。
A 歓迎してもらえるという前提から間違えています。

Q 社員はどんな人が多いんですか?
A 体育会系もしくはヲタクもしくはギャル。

Q 仕事でいちばん大切なことは何ですか?
A スピード。

Q 仕事のどんな点が楽しいですか?
A ごめん。楽しさは求めてない

Q どんな社会貢献や地域貢献をしていますか?
A ごめん。自分たちが生きていくだけでカツカツ。
 
Q 就職とは何ですか?
A 自分以外の誰かが作った世界に入ると積極的選択。

Q 会社って何ですか?
A カラ箱。

Q 東京の出版社も受けているのですが・・・。
A 東京にしとき。悪いこと言わんから。

Q 将来は文章を書いて生計を立てたいと思っているのですが。
A (ううっ、困った人が来た)

Q カメラで風景や友達の表情を撮るのが好きなんですが。
A (ううっ、また困った人が来た)

Q 私の思いを雑誌を使って発信したいのですが。
A ミュージシャンか詩人になってください。

Q 私が良いと思う徳島の情報を世界中に届けたいのですが。
A あなたのブログでお願いします。

Q コミュ障なんですが大丈夫ですか?
A 初対面から弁舌豊かな人物の方が怪しいです。

Q 徳島なんて田舎で月刊誌を3誌出している理由は何ですか?
A 本当は30誌くらい出したいのに商才ないせいで3誌で止まってる段階。

Q やっぱり好きなことを職業にすべきですか?
A デスメタルが好きでも地獄の使者にならなくていいし、大山倍達が好きでも猛牛と戦わなくても構わないと思われる。

Q インターンシップはできますか?
A 給料払わずに人に命令するのが嫌なのでアルバイトなら受けつけます。

Q 会社の近くにコンビニはありますか?
A 自分で探してください。

Q 大学中退ですが採用試験受けられますか?
A 義務教育のお務めを終えているなら。

Q 取材なんて私にできるんでしょうか?
A 目の前の人に質問30コできたらイケる。

Q 運転に自信がなくて、遠出とかはできそうにないですが、大丈夫ですか?
A 無理。

Q 仕事のストレスはどうやって解消されていますか?
A サウナ→水風呂→サウナ→水風呂→サウナ→rev.

Q 小さい会社ならではのいい面って何ですか?
A テメェ面と向かって失礼だろ。

Q やっぱり深夜にソファで仮眠するような過酷労働ですか。
A 深夜にソファで寝られません。「寝るな仕事やれ」と叩き起こされます。

Q やっぱり地元愛が強い社員さんが多いんですか?
A それほどでも・・・。

Q 愛社精神を求められますか?
A 愛される資格はありません。

Q 年間どれくらいの量の紙を使用していますか。
A 約50万キログラム。500トンです。

Q 再生紙は使っていますか。
A 使いませんよ。

Q 地球環境についてどんな姿勢でいらっしゃいますか?
A それ出版社に聞くぅ〜?

Q 紙を使った出版業という仕事に将来はあるのでしょうか?
A そんな千里眼あったらいいね。

Q 「雑誌が売れなくなった」というニュースをよく見ますがどう思いますか。
A 出版界全体を憂う立場にはないのです。何も感じません。

Q 上下関係は厳しいんですか?
A 反論しなければ怒られるというドSかドMかわからない奇習あり。

Q 飲みニケーションは盛んですか?
A 一人酒専門です。

Q 御社に東京五輪決定の影響はありますか?
A いちおうトレーニングはじめました。

Q 社内サークルはありますか?
A 100キロマラソン部。

Q 内定式ってあるんですか?
A そんなんやってる暇ないのでしません。

Q OB・OG訪問可能ですか。
A 暇をもてあましている人はいません。

Q ブラック企業ですか?
A マルコムX伝記を読みなはれ。

Q 採用試験が1日だけですが、それでちゃんと人物を見分けられる?
A 20年連れ添った夫婦でも「アナタがそんな人とは知らなかった」別れたりするよ。

Q 失礼ながら御社のホームページは貧弱では・・・
A あ、これね。お金かけたくないのよ。

Q 保養施設はありますか?
A 我々は中小企業の「小」の部類に在るんだせ!

Q 今年の社員旅行はどこに行きますか?
A 誰一人として行き先知らずのままバスで護送されるらしい。

Q 仕事のやりがいってありますか。
A 10年やった後でじんわり感じるものです。

Q 編集長に必要な能力は?
A 毒舌と美貌。

Q 4月から入社しなくてもいいんですか?
A いつでもどうぞ。むろん労働開始するまでは給料ナシ。

Q デザイナー志望ですがどんな試験がありますか。
A ちょちょいと手際を見せてください。それで大体わかります。

Q 徳島県出身者ではないのですが、入社後何かと苦労しませんか?
A その気になるならチベットでもコンゴでも働けますよ。何事もあなたしだい。

Q わが国の少子化について危機感は?
A 1億2000万人って戦後に増えすぎただけよ。4〜5000万人が程良い。

Q ソーシャルメディアについてどう思いますか。
A 専制君主国における市民革命には大いなる武器、OECD加盟国レベルでは無限大の浪費。

Q 仕事のやりがいって何ですか。
A 何かな。人によって違いすぎて、まとめるの困難です。

Q 入社前に勉強しておくべきことはありますか。
A 文章を猛スピードで書けるようにしておいてください。400字なら30分目安で。

Q 社風は温かいですか。
A 粉雪が舞っています。

Q どんな人物はNGですか。
A リアルで寡黙、ネットは雄弁。
  会議で寡黙、化粧室は雄弁。
  職場で寡黙、飲み屋は雄弁。

Q ボランティア経験は評価されますか。
A どちらかと言うとマイナス。

Q どうしてマイナスなのですか。ふつうはプラスでは。
A 商売はボランティアと真反対の位置にあるから、かな。

Q アルバイト経験は評価されますか。
A プラスにもマイナスにもなりません。

Q 本当の採用基準はなんですか?
A 陽気さ、かな。

Q ぼくはバカなんですが、採用してもらえますか?
A 陽気なら。

Q 社員間の絆を高めるために、何か取り組みはされていますか。
A 絆は求めていません。

Q 仕事の楽しい点を教えてください。
A 似たような質問多いけど・・・仕事に楽しさ求めてない。

Q 徳島県以外の地域ではビジネス展開しないのですか?
A 方言が通じないと不安で不安で。

Q 地方で出版を続けるのは大変なのでは。
A 競争少ないので大変ではない。

Q 東京に進出する気はないですか。
A 雑誌が山のようにある場所より、ない場所でやりたく思います。

Q 雑誌を作るうえで大事なことはなんですか。
A 仕事と遊びの混同。

 どんな質問に対してもズバッと魅力的な返事ができる大人になりたい。若者の情熱に火をともすファイティング・スピリッツ溢れるお話がしたい。この人物は既成社会の枠組みや地球の未来を変えてしまう大人物なのではないかと思われたい。少年のような無垢な想いを胸に、無謀な事にたった一人で立ち向かっている素敵なおじさまかも、と憧れられたい。イタリア製の生地で仕立てたスーツを嫌みなく着こなし、ワインの知識をサラッと披露し、首相や大統領につながる女性人脈をベッドで持っていたい。さあ、今宵はレンタルマンガ屋さんに寄って「会長島耕作」でも熟読するとすっか!