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2009年03月17日

熱砂に汗がしゅみこむのだ サハラマラソン参戦30日前「全装備」
文=坂東良晃(タウトク編集人)

 さてと、ぼちぼち旅支度である。サハラ旅に必要なすべての道具を押し入れから引っ張り出し、床いっぱいに広げてみる。小さなバックパックにこんだけの物が詰め込めるとはまさに魔法。荷物の真ん中に寝っころぶ。実際に使うか使わないかはさておき、イザって時に生命を救ってくれるモノどもに囲まれると、癒しのエーテルの海に漂う心境。
児童文学「エルマーのぼうけん」導入部に登場する挿絵・・・エルマー少年がキスリングザックにいろんな荷物を詰め込んでいく場面は永遠のマイ・フェイバリット・シーンであるが、誰にも内緒で極秘に冒険の旅の計画を思いついてしまった少年のように無言で興奮している。天井を見つめて瞑想する。70年代、二十代半ばでサハラ砂漠横断7000キロを試みマリで渇死した青年冒険家・上温湯隆が、ほとばしる全情熱を焼きつけた砂の聖地への入城は目の前なんだよね。20年ぶりのバック・トゥ・ジ・アフリカは、ニーチェの提唱する永劫回帰を実践する旅なのかもね。遠くまでいくことは回帰することだと老子先生は説いたよね。人生は転がる石のようだねライク・ア・ローリンストーン。
 少し我に返ろう。以下はこの半年でコツコツと集めたサハラマラソン全装備だ。こんな情報が誰の役に立つというのか。誰の役にも立たない。メディアは消費者に役立つ情報ばかりを提供しすぎなのだ。少しはウンコちゃんのような無益な情報を出しやがれ。ぼくのクソ情報はインターネットより遅く、世界を網羅することもなく、地球のどこかの裸電球かがやく四畳半一間に届く。そして、情熱の吹き出し口が見つからず爆発寸前になっている若者の心に、静かに火の粉をふりかけるのだ。引火して、発火して、爆発しやがれ、である。

【バックパック】OSPREY「EXOS 34」
 アウトドアショップ「ジョイン」店頭でこのバックパックと対面したぼくは、瞬時に恋に落ちた。脳天にピカガラと稲妻が落ちたのである。性能はさておき、黄土色のこいつと赤褐色のサハラと、ぼくとの三角関係を夢想すると興奮が止まず、早く店頭から拉致したいという衝動を抑えられなくなった。理由はない。一目惚れである。
 レースの成否はバックパックにかかる。身体の密着度合いからしても、シューズとともに肉体の一部として扱うべき存在だ。バックパック選びに失敗すれば肩・首・腰と痛みが広がり、最終的にはレースから逃避するかせぬかの葛藤に追い込まれる。
 ぼくがバックパックに求める最大要素は、ベルトを自分の感性のままに調整できるかどうかだ。バックパックは3つの点で支えられている。右肩、左肩、腰である。その各支点にかかる負荷は3つのベルトでコントロールする。ショルダーハーネスと呼ばれる両肩のベルトを緩め、ウエストベルトを締めたら荷物の90%ほどの重量が腰にかかる。その逆もできる。平常時では背中全体に重量を分散させるが、数分単位で主たる加重の場所を変える。走りながら、指一本ミリ単位の操作でコントロールできるベルトが理想だ。
 半年前にアドベンチャー・レース用に特化した「グレゴリー・アドベントプロ」というザックを仕入れ、練習を重ねていた。しかし登山用ザックとの「締め方の違い」に慣れなかった。そんな現妻との相性もあったのだろう。意のままに加重を操れるOSPREY「EXOS 34」との出会いは運命だと思えた。レース1カ月前にしてのバックパック変更だが、吉凶はやってみないとわからん。
 重量は910グラム。背中とザックの間に空間が設けられているので、汗がザック内に染み込まない。10キログラムの荷物を入れ全力で走ってみると、身体とのフィット感がすぐれている反面、やや背中でバウンドする傾向がある。それも愛嬌と受け止めよう。とにかく恋に勝るものはない。こいつと心中すると決めた。

【シューズ】サロモン「XTウィング」
 大きく左右に張り出たアウトソールによって、岩・ガラ場のエッヂを確実に捕捉する。頑丈で大がかりなソールと引き替えに軽量さは失われ、片足390グラムと重量感がある。
 他のシューズと一線を画しているのは「クイックレースシステム」と呼ばれる独特の靴ヒモ。幅1ミリ未満の細く頑丈な1本のヒモがリング状にシューズに張り巡らされており、指1本で締める・緩めるを調整できる点である。砂漠の連続ランでは、足の裏や甲が大きく腫れあがるという。そんな状況変化に対応してくれそうだ。ぼくの平時の足裏のサイズは26センチだが、腫れを見越して28センチを選んだ。
 また、サハラでは靴内部に侵入した細かな砂がやすりとなって足裏をこすり、ためにマメができてたいそう苦しむと言う。「XTウィング」は、砂を通しにくい形状のメッシュ素材で覆われている。が、きっとマメについてぼくは他人よりも耐性がある。三度にわたる千キロを超える徒歩旅行をこなすうちに痛みに慣れてしまった。火であぶったピン先で挿して水分を飛ばし、鉄のようにテーピングすれば痛点はなくなる。問題ない。

【ボトル&ボトルホルダー】モンベル「アジャスタブル ボトルホルダー」
 主催者から支給されるペットボトルの水を、常時1.5〜4.5リットル保持しながら走るためには、バランスの良いパッキングが求められる。背中に10キロの荷を背負い、身体の前面にウォーターボトルを数本装着して、前後のバランスを取る。欧米のバックパックメーカーは、ザックに装着するさまざまなアタッチメントを開発しているが、日本では入手困難だ。ようやく見つけたのがコレ。背面のマジックテープを使い、バックパックのショルダーハーネス(肩ベルト)に装着できる。1リットルのボトルが入るので左右で2キロ分の水を体前面に保管できる。

【ウエストボトル】ネイサン「ランニングウエストバッグ Xトレイナーミューテーション」
 500〜650mlのボトルを横置きに収納。サイドには148mlのゼリーチューブをセットできるホルダーがついている。横揺れ、縦揺れの少ない秀作である。

【ウォーターリザーバー】モンベル「オメガリザーバー 2.0L」
 3つのボトルホルダーに加え、バックパック内には2リットルのウォーターリザーバーをセットする。水の入った袋につながるホースを肩口から胸元に伸ばし、走りながら水補給できる。ホースの先の吸引部分は奥歯で軽く噛めば、勝手にリザーバーから水が押し出されてくる。このオメガリザーバーの利点は大開口部にある。大人の腕も入る巨大な給水口からは手をつっこんで水洗いできる。年がら年中清掃する必要もないが、スポーツドリンクを使う場合は炎天下だと腐るので、洗浄が必要なのである。また吸水口上部にフックがついており、バックパックの上ブタあたりから吊り下げることができる。こんなちょっとしたアイテムが、実戦での使いやすさにつながる。前面のボトル+背面のリザーバーで合計4.5リットルの水を身にまとう。

【シュラフ(寝袋)】モンベル「U.L.アルパイン ダウンハガー#5」
 重量わずか475グラム、世界最軽量クラスのダウンシェラフだ。軽さだけを主眼に置いて選択した。サハラ砂漠の夜の気温は摂氏10度前後。仮に5度まで下がっても必ずしも寝袋が必要とは言えないが、大会主催者から「必携品」に指定されているため、持たざるを得ない。U.L.アルパイン ダウンハガーは末尾の数字が大きくなるほど軽量化していく。さすがに#5
にもなると中のグースダウンもまばら。太陽に透かすと向こうがスケスケ。だが僅か475グラムに文句を言ってはいけない。夜露と夜風がしのげればいい、と考えておく。

【ダウンジャケット】ムーンストーン「ルシードリッジダウンジャケット」
 グースダウン93%、わずか250グラムの超軽量。格子状の縫製がされているためダウンの偏りができない。ランのあと日没から睡眠までの時間帯に使用する。睡眠時はシュラフと併用して快眠をむさぼる。

【帽子】Kappa「バンダナキャップ」
 砂漠の強烈な日射しから頭部を守る。おでこに布をあてがい、後頭部の布をまわしてマジックテープで留め、頭頂部から首筋まで布で覆う。大きめの三角頭巾みたいなものだ。うらめしや〜。

【サングラス】アディダス「a150」
 直射日光や砂からの反射光から眼球を守る。

【主食1】尾西食品「ごはんシリーズ」
 「白飯」「五目ごはん」「わかめごはん」「梅わかめごはん」「赤飯」「山菜おこわ」「炊込みおこわ」の7種類のアルファ米シリーズと、「白がゆ」「梅がゆ」の乾燥粥シリーズがある。1袋100グラムで300〜400キロカロリーの熱量がある。いずれも熱湯を袋に注ぎ、封を閉じて15分程度待つ、というだけの簡素さ。保存食とは思えないほどの美味で、袋の封を開けるタイミングさえ間違えなければ炊きたてごはんのようなふっくら感を再現できる。実験的に試食している段階でやみつきになり、1週間連続で主食扱いとなった。湯が沸かせないときは冷水を入れても1時間で食べられる柔らかさに戻る。袋のまま食べられるので食器いらず、しかも各袋に1本ずつスプーンが付いているという至れり尽くせり感。サバイバルの最高のお友だちだ。

【主食2】レガー「岳食シリーズ」
 登山家に愛用されるレガーのアルファ米シリーズは、尾西食品の和風シリーズに対しオシャレ感漂う洋風メニューで種類も多彩。「野菜コンソメリゾット」「トマトリゾット」「チーズリゾット」「サーモンリゾット」「きのこリゾット」「ビーフカレー&ライス」「ガーリックリゾット」「サーモンピラフ」「カレーピラフ」「ポーク&ガーリックピラフ」「チキン&やさいがゆ」「おぞうに」「おしるこ」。うむ、これじゃあふだんの食生活よりグレードが高くなるじゃないか。重さは1食80グラムほど、カロリーは300キロカロリー前後。主催者サイドから7日間で1万4000キロカロリー分の食料携帯を義務づけられているから、単純計算でこれら乾燥食料を47袋バックパックに詰めないといけない。1食90グラム平均として総重量4.2キログラム。けっこうな重さである。荷物を軽量化させるため、初日、2日で大量に食ってしまおうと思っている(甘いかな?)。

【その他食料】
 丼のもと、雑炊のもとなど乾燥食料を多数。顆粒状のコーヒー12本、アクエリアス6袋など。

【コッヘル】
 食器はこの1コだけ。火の元は砂漠の風に舞う小枝にライターで着火。至ってシンプルで原始的な食生活を営みます。

【ナイフ】ビクトリノックス「オフィサーナイフ 91mm スタンタード・スパルタンPD」
 暑い国ではナイフ1本と食料・水があれば、何はなくとも生命は維持できる。使い慣れたナイフは、缶切りからスプーン、緊急時のメスの代用まで、あらゆる生活小道具の役割を果たしてくれる。

【アルミ製のサバイバルシート】
 表が金色、裏が銀色のアルミ蒸着シート。負傷などで体温が低下したときは金色を外向きに身体をくるみ体温保持、銀色を外側にすると高温・炎天下時の日よけ・断熱効果が期待できる。たぶん薄いシュラフだけだと夜は寒いので、こいつを簀巻き状態にする予定。
 
【懐中電灯・スペア電池】サウスフィールド「SF LEDヘッドランプ 」
 キセノンライトとLEDライトが組み合わされている。LEDは3段階の強弱調整ができ、さらにキセノンライトは集光散光調節ができる。レースの4〜5日目には、昼夜をかけて最長80キロを走るノンストップステージがある。電池消費を避けたうえで、ルートを迷わず確実に辿るために、数パターンの光のオプションは役立ちそうだ。単四乾電池3本を加えても150グラムと軽い。

【コンパス】シルバ「Ranger3」
 砂漠に道はない。地形と方角確認はランナーの最低限の務め。

【警告用のホイッスル】A&F「エマージェンシーホイッスル」
 プラスチック製の笛の表面にはSOSモールスコードが刻印されている。8グラムという身軽さながら、思いっクソ吹けば相当やかましい音が出る。砂漠のど真ん中で、ひとりぼっちでこの笛をピーピー吹いているような、もの悲しい結末にはしたくないもんだな。

【シグナル用の鏡】 完全に道を見失った際に、日光を反射させて自らの存在を捜索者に知らしめるもの。命がけの地味な行動だ。

【時計】セイコー「スーパーランナーズ」
 サハラマラソンがレースである限り、より速く、よりよい成績でゴールをめざし走るのは定めである。マイペースで走るのならレースに出る必要なんてないんだからさ。時間の管理を託すのは、この相棒をおいて他にはない。オーソドックス・イズ・ベスト、スタンダード・イズ・ベストの代表格だ。

【カメラ】オリンパス「防水デジタルカメラ μ1030SW (ミュー) 」
 砂の侵入の心配が一切ない防塵設計。汗と脂でドロドロの手でつかむもよし、水洗いもよし。高さ2メートルから落下させた耐衝撃実験も念入りに行われたマニアックなコンパクトカメラだ。「XDピクチャーカード 2GB」と 「リチウムイオン充電池 LI-42B」の予備を1本ずつ持って行いく。

【毒素抽出用のスネークポンプ】ドクターヘッセル「インセクト ポイズン リムーバー」
 サソリや毒虫に刺され、咬まれた場合の応急処置に使用する。刺されたら2分以内にこのマシンを傷口に押し当て、皮膚の表面をカップ内にバキュームし、毒液を体外に出す。せっかく入手した珍品ながら、なるべくなら恩恵に預かりたくはないものです。

【ワセリン】健栄製薬「日本薬局方 白色ワセリン 60グラム」
 股間に塗り股ズレを予防する。あるいは男性の大事な部分・・・つまりマラに塗りたくる。歩幅70センチとして230キロメートルを走り切るには、32万8000回という途方もない回数、脚を前方に繰り出さなければならない。その回数こすられるマラ君の労苦たるや想像を絶する。せめてワセリンという名の愛で包んでやりたいのである。

【その他薬品】 
 絆創膏20枚、鎮痛薬20錠、医療用固定テープ2巻など。

【消毒剤・液】第一三共ヘルスケア「マキロンS 30ml」
 大会サイドからの携帯指定品。マキロンS30mlにしたのは、ドラッグストアに置いてある殺菌消毒剤でこれが一番軽量であったという理由。

【安全ピン10本】
 大会サイドからの携帯指定品。ナンバーカードを留めるためだと思われるが、安全ピンは思いがけず役立つ。特に足マメの処理には欠かせない。

【その他】
 心電図、健康診断書、パリ往復航空券、パスポート、ライター、タオル
【大会サイドからの提供品】
 発煙筒、固形の塩、照明スティック 

  
遠足準備にいそしめば、夜がしらじらと明ける。今宵は目が冴えて眠れない。眠れない夜は1日分得した気分だ。バックパックかついで夜明けの海岸に走りに行こう。無駄なことに汗を流し、無駄なことに命を張ろう。道を踏み外してからが人生のはじまりさ。どうせ死ぬまでのお祭りよ。暴れまくって生きてやろう。

2009年03月16日

月刊タウン情報CU*2月号 実売部数報告 cu0902_busuu.jpg cu0902_suii.jpg


月刊タウン情報CU*2月号 実売部数報告です。
タウン情報CU*2月号の売部数は、
7308部でした。
詳しくは、上部に表記してある画像をクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
「月刊タウン情報CU*」「月刊タウン情報トクシマ」「結婚しちゃお!」
の実売部数を発表しております。
月刊タウン情報CU4月号特別ふろく本「Beauty World」 BeautyhyoushiOL_web現在発売中の月刊タウン情報CU4月号には徳島のビューティサロン150店舗が掲載されている特別ふろく本「Beauty World」がついています。
お肌をキレイにしたい、スリムなメリハリボディに憧れる、うっとりネイルにが戦したい、クリニックでキレイにしてもらいたい、春髪に変えたいなど、女性の美への願いはこれ1冊で解決できるとっても便利な本です。



2009年03月13日

月刊タウン情報トクシマ2月号 実売部数報告 tautoku0902_busuu.jpg tautoku0902_suii.jpg

月刊タウン情報トクシマ2月号 実売部数報告です。
タウン情報トクシマ2月号の売部数は、
8363部でした。
詳しくは、上部に表記してある画像をクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
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2009年03月12日

CU4月号は本当に美味しいもの白書! tokushima-cu0904あなたは今までに心の底から美味しいと感じたものに出会ったことがありますか?
CU4月号の特集は「ごっついおいしいもん2009」。徳島の女性が「これはおいしい!」と唸った究極の75品を集めました。そのなかには、和食、洋食、中華にカフェメニュー、はたまたテイクアウト可能なスーパーのお惣菜やデパ地下のお弁当などジャンルを問わず大放出。口にした人みんなが笑顔になれる徳島の五つ星メニュー&食材。これを見て幸せ美食ライフを謳歌しましょー。

2009年03月10日

結婚しちゃお!冬号 実売部数報告09冬号_結婚しちゃお!部数報告書.pdf
09冬号_結婚しちゃお!部数推移.pdf

結婚しちゃお!冬号 実売部数報告です。
結婚しちゃお!冬号の売部数は、
1258部でした。
詳しくは、上部のファイルをクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
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2009年03月05日

さらら3月5日号と一緒に自転車に乗って出かけよう! tokushima-salala0305春の足音が聞こえて来そうな今日この頃。さらら3月5日号の特集は…「今日から変わる!マイ自転車生活」。
次第に暖かくなってくる今だからこそ、健康にも家計にも優しい自転車生活を始めてみませんか?あなたの家にある使い古された自転車をより快適に乗りこなす方法や、徳島の街がもっとこうなれば自転車に乗りやすくなるのに…というご意見をどどーんと紹介。これを読めば、あなたの自転車生活が変わります!
また巻頭の「嗚呼!さらら番付」は、徳島県民に聞いた「旅先で大失敗」。楽しい旅の思い出に必ずといっていいほどついてくる、ずっこけ話。さぁ、あなたはどんな失敗をしてきましたか?

2009年03月03日

熱砂に汗がしゅみこむのだ サハラマラソン参戦3カ月前「走る意味」
文=坂東良晃(タウトク編集人)

 走るという行為には、それ自体に純粋な意味がある。振りだした脚で思いきり地面を叩き、これでもかと心臓を打ち鳴らし、呼吸を荒げ、苦しさに顔をゆがめる。その行為そのものに意味がある。
 競技大会でいい成績を残すことや、特定の距離で自己ベストを出すといった目標・・・過去の自分よりもレベルアップした今の自分を数値で確認することは、マラソンに取り組むうえで大きな動機づけとなる。しかし、そういった知的な目標・・・ストップウォッチや心拍計、あるいはGPSやフットポッドを動員して綿密にレースペースや体調を管理するという、とても都会的で自己管理型の目標とは違う「走る動機」が、身体のどこかに宿されている気がする。

 十代の頃、ぼくは走っていた。
 陸上部員でもなく、市民ランナーでもないのに、毎日走っていた。「何キロ走った」「何分で走った」という数値目標はなく、ただ走っていた。漫才部と格闘技研究会と新聞部に所属していた高校生の頃も走っていたし、高校を卒業し今でいうフリーター、当時はプータローと呼ばれる生活に入ってからも走っていた。
 早朝新聞配達をしていた頃は昼間に走り、夜勤の運送屋で稼ぎながら明け方に走り、昼に土建屋を手伝いつつ夜中に走った。肉体労働をし、同年代のサラリーマンよりたくさん金をもらいながら空き時間を見つけて走った。給料にほとんど手をつけないので何カ月か経つと金が貯まる。頃合いを見て銀行で全額下ろし、長い旅に出る。

 十八歳。北海道から東京まで1400キロを走り、歩いた。
 十九歳。北海道から鹿児島まで2500キロを走り、歩いた。
 二十歳。ケニアからカメルーンまで5500キロを走り、歩いた。

 今でいうところの超長距離走というジャンルなのだろうか。ぼくの場合は競技や記録づくりの意味合いはない。スポーツではなく、冒険旅行でもない。他人のやらないことをやってやろうとの野心もなく、ただ無我夢中で移動していた。自分がいったい何を目指し、何をやっていたのか、当時はよくわからなかった。とにかく自分の脚でどこまで行けるのかを知りたかった。アスファルトや土を踏みつけながら、何物にも頼らず遠くに行きたかった。率直に述べれば「他にやることがなかった」のであり、「処理に困るほどのエネルギーの持っていき場がそこだった」のである。
 想像を絶するほど遠くまで行けば何か答えが見つかるのではないか、という確信・・・いや信仰めいた思いがあった。小田実や植村直己や藤原新也や沢木耕太郎がおこなった二十代の旅。旅という熱波が、無力で非生産的な青年期の若者の内面に語るべき言葉を溢れさせたように、ぼくにもそんなマジックが働くのではないかという希望的観測。
 走り、移動し、旅を続けた4年間。答えは、長くさまよったアフリカの熱帯雨林地帯にあった。ジャングルの中でめぐり逢った人びとは、生まれてから一度も自分の集落やコミュニティを出ない。半径数キロの行動範囲の中で一生を終える。ところが、生まれて初めて遭遇する外国人・・・ぼくに対して警戒もせず、充分な施しを与えてくれる。皆おおらかで、親切で、心配性で、明るく、人間味に溢れている。生活に余分な装飾はなく、人生を揺るがすファンタジーもない。実直に生き、ふところ深く人を受け止める。
 「今ここに存在しない自分」を求めて旅してる自分は何だろか?と考え込む。シャングリラやらガンダーラやら「機械の身体をタダでもらえる星」なんてあるわけない。アフリカの人たちに比べて、ぼくはなんて陳腐なんだ、ああ陳腐な人生だね! そして走ることをやめた。生まれた場所に戻り、プータローを引退した。マジメに働いた。 

 四十歳を目前にして、再び走りはじめた。
 社会に出て20年、ぼくは本をつくって生きてきた。「いっしょに本をつくろう」とたくさんの若者に声をかけた。若者たちは本をつくることで生活の糧を得、社会のしくみを学んだ。
 「お前は何のために経営をしているのか?」と問われたら、昔は答えられなかったと思う。今は「若い人を雇うためだ」と断言できる。企業活動の本質は、職場づくりだ。いい職場があってはじめて世間に評価されるモノが作れ、誰かの役に立つサービスが提供できる。いい職場であるためには、そこに働く人たちが他者の意思ではなく自分自身の考え方によって行動する必要がある。自立した考えを持ち、揺るぎない意志をもとに行動する人である。
 会社を創業したころ二十代だったメンバーがベテランとなり、本づくりの中心にある。ぼくに代わって彼らが若者の育成に汗を流し、問題や危機に即断対処している。前向きな提案は全員にメールで送り、否認がない限り実行できる。経営者や上司の承認など待つ必要はない。変えたい者がルールを変えられる。モノをつくる会社で最も尊重されるべきは現場である。働く時間も、休日も、商品企画も、すべて自分で決め、誰の指図も受けない。誰かにやらされるのではなく、自分の意思でやる。そのような考え方の基盤をつくった。安定経営よりも若者の採用を最優先し、若者がパワーを発揮できる場所を用意することに全力を注ぐ。そんなチームづくりが完成に近づいたのだ。
 では次の20年は何をすべきか?と考えたとき、心象風景が一気に20年前へと遡る。高校を卒業して社会にポッと飛び出し、いったい何をやっていいかわからず、ただガムシャラに走っていた頃と何一つ変わらない心の地図が蘇るのだ。
 あの頃考えていたこと・・・人として生まれ、社会的生物として生きていくには経済活動か、もしくは奉仕活動を行い、人のためになることをしなくちゃいけない。独立した一個人としては、他人に迷惑をかけない程度の最低限の収入を得て、目的をやり遂げるための原資を所有しなくてはならない。・・・そんな青二才でモラトリアムな高校生レベルの事しか頭に浮かばないのである、四十にもなって! 人の集団づくりに懸けてきた自分が、いつしか組織に頼り、1人では何もできない大人になっちまってんの?
 「今から何をなすべきか?」と問うてもレーニンは答えてくれない。瞑想しても滝に打たれても解脱など起こらない。地上のどこにもその解答はなく、自分の内側に存在している。だから走ることを再開したのだ。走るという行為を通じて、身体の表面から余分な物を削り取っていき、その核心に近づく。実際のランニングだって、突き詰めれば無駄を削ぎ落とす作業なんである。前方への推進力を阻害する要因をフォームからなくし、最大酸素摂取量を向上させるため脂肪を落とす。速くなればなるほどランニングシューズのソールを薄く、ウエアを軽くして、裸に近づいていく。
 同じことを脳みその中でやってみる。走りながら考える。それは静止した状態の思考とは明らかに違う。オフィスで頭をひねっていても決してたどり着かない結論に、ランニング中に一瞬で到達するときがある。太古から何万年間も獲物を追っかけ回していた人類の子孫なんだから、走るという動的状態において脳みそがベストエフォートを得ようと活発化するに違いない。獲物追っかけている途中に、10コもの選択肢があってアレコレと迷っている狩人なら、たちまち敵に食い殺されてしまう。走り出したら、頭に浮かぶ選択肢は2つか3つ。そして判断は速攻。人の中の野性がそうさせるのだ。
 ぼくはきっと、これからの20年に対して、とてもシンプルな答えを導き出すために走っている。イーブンペースは大無視して、ハンガーノックよ枯渇よこんにちは。チギられ、もだえ苦しみ、自分の核にたどりつけ!

2009年02月27日

タウトク3月号特別ふろく「TOKUSHIMA LIFE」 0903LIFE2.jpg本日発売のタウトク3月号には
特別ふろく・新生活&春あそび大応援ブック
「TOKUSHIMA LIFE」が付いています!

春のおでかけや、お買い物はもちろん
就職・転勤・進学など、
これから徳島で新生活を向かえる人にも
力強いガイドとなる1冊です!


思わずにんまり。安くてうまい感動のメニュー!タウトク3月号 tokushima-tautoku0903★超お得!驚きの安うまグルメ★
お財布に優しい100円メニューからワンコインランチ、しっかり食べたい人にオススメの激安定食など、お店の人の優しさに感激してしまう「安うまグルメ」をご紹介。テーブルに運ばれてきた瞬間、誰もが驚く超得メニューが満載です。きっと誰かに教えたくなること間違いなし!
★特別ふろくTOKUSHIMA LIFE★
この春必携!徳島を100倍楽しめるふろく本付き。徳島県内無料で遊べるスポットや歓送迎会に使えるグルメガイドは要チェック!

2009年02月13日

今度はカフェ! 幸せランチ時間のおともはCU3月号 tokushima-cu0903前号に引き続き、3月号の特集は「ランチ100」。今回はついつい長居してしまいそうになるカフェのランチをピックアップ。ひとくちにカフェと言ってもさまざまで、たとえば緑の絶景が楽しめたり海が一望できる感動系カフェや、アミューズメント施設や雑貨スペースも併設された、一度で二度美味しい欲張りカフェ、珈琲にこだわった喫茶店や女性オーナーが活躍する愛されカフェなど、挙げればきりが無いほどいろんなカラーを持った県内のカフェが大集合。ごはんだけでなく、雰囲気まで美味しくいただけちゃうのがカフェの強み。100店の100通りのランチを存分に満喫するために、さぁカフェ巡りを始めよう。

2009年02月01日

月刊タウン情報CU*1月号 実売部数報告 cu0901_busuu.jpg cu0901_suii.jpg

月刊タウン情報CU*1月号 実売部数報告です。
タウン情報CU*1月号の売部数は、
5917部でした。
詳しくは、上部に表記してある画像をクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
「月刊タウン情報CU*」「月刊タウン情報トクシマ」「結婚しちゃお!」
の実売部数を発表しております。
月刊タウン情報トクシマ1月号 実売部数報告 tautoku0901_busuu.jpg tautoku0901_suii.jpg

月刊タウン情報トクシマ1月号 実売部数報告です。
タウン情報トクシマ1月号の売部数は、
9506部でした。
詳しくは、上部に表記してある画像をクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU*」「結婚しちゃお!」
の実売部数を発表しております。

2009年01月29日

徳島で結婚を決意したら読む本。 結婚しちゃお!春号 kekkonshichao-2009spring地元徳島での結婚に役立つ情報満載の
「結婚しちゃお!春号」が1月28日に発売されました。

人気の式場・披露宴32会場をはじめ、指輪、衣裳店、
写真館、エージェント・プロデュース会社、美容室、
演出・引出物、2次会パーティ会場など、
県内のウエディング関連のお店を413店掲載!
これからすぐ結婚準備に取り掛かるという人はもちろん、
結婚を意識し始めたカップルも読んで楽しく
知って得する内容がたっぷり詰まっています。
熱砂に汗がしゅみこむのだ サハラマラソン参戦4カ月前「追い込みの記録2」
文=坂東良晃(タウトク編集人)

【一人箱根駅伝 140キロ走】
 駅伝とは不思議な存在である。まず、世界のどこでも認められていない日本ローカルの競技方法である。いくつか国際大会が存在するといってもあくまで日本の陸連などが主催する、他国の選手を日本に招聘してのイベントに過ぎない。
 ましてや年始の風物詩とも言える箱根駅伝に至っては全国大会ですらない。関東学連が主催する関東地区の大学生による地域ローカル大会である。だがその大会に賭ける選手・関係者の強烈な思いと情熱が、ふだんスポーツ観戦などしない視聴者や沿道の観客を巻き込み、歓喜の渦を作り上げるのだ。箱根駅伝は敗者の物語である。本人もチームも観客も、誰もが納得する結果を出せる選手はほんの一握りだろう。襷をつなげなかった選手は地に崩れ落ち、シード権を失う原因となった自分を激しく責める。優勝を果たせなかった2位校のアンカーは、詫びの標として両手を合わせてゴールに入る。18〜22歳の今どきの若者が、何と純日本人的な行動を見せるのか。純粋さと、鍛錬と、絶望と。そして再起と。そんな物語を日本人はこよなく愛するのだ。
 去年の正月までは温いコタツに足を突っ込んでボーッと箱根駅伝中継を眺めていたメタボかつアラフォーなぼくが、たまたまランナーのはしくれとなった。もしかしたら自分の脚で、あの箱根路を走ることができたりして・・・なんて思いに取り憑かれた。大手町−箱根間の往路108キロというのもサハラ・トレーニングとしては最適な距離である。これはもうやるしかない。
 東京行きの高速バスを利用し、12月29日早朝6時に浜松町に着く。そこからJR東京駅まで山手線で移動し、箱根駅伝のスタート地点である大手町・読売新聞東京本社前まで10分ほど歩く。まだ完全に夜も明け切らぬ午前7時に出発。左手に高層ビルが林立する丸の内再開発エリア、右手に皇居を望みながら日比谷通りを南下する。帰省シーズンに入った早朝の都心部は人影もまばらで、空気がすがすがしい。小ジャレたカラー煉瓦敷きの歩道は車道2車線分ほどもあり、とても走りやすい。視界には次々と東京の観光名所が現れる。東京駅、日比谷公会堂、内幸町のプリンスホテル、東京タワー、芝増上寺。首を右に左に回しているうちに目まいがしてくるほど。しかし都心部という言葉がイメージさせるハイソサエティな風景は1時間も走るうちに徐々になくなり、庶民的な商店がガード下の軒を連ねる下町的ムードにとってかわる。駅伝中継の名場面でもある蒲田踏切を踏みしめ、川崎との境界である六郷橋の上からは、河川敷の野原にいくつものバラックが建ち並ぶ自由区が見渡せる。ホームレスのおじさんたちがアルミ缶の仕分けと自転車の修理に精を出す。東京丸の内から川崎バラックへと続く道には、人間社会の聖と俗、頂点と底辺が博物館の展示のように示されているのだ。
 鶴見中継所の位置がよくわからないまま横浜駅前に達すれば30キロ地点。80年代の名作映画「夜明けのランナー」は、青年・渡辺徹が東京から横浜までを一晩かけて走るってストーリーだったか。ここはすでに各校のエースが激突する「花の二区」の山場。選手たちは終始トップスピードで駆け抜けている印象が強かったが、権太坂や遊行寺の坂は思いのほか傾斜が強く、またこの坂に終わりはあるのかと切なさが増すほどに長い。こんな過酷な道でエースたちは鍔迫り合いをしているのだ。
 強い浜風が強敵だとされる三区は、湘南海岸と平行する国道134号線を行く平坦路。ふと気がつけば国道わきの防砂林の向こうにたくさんのジョガーの姿が見える。何ごとかと思い海辺に足を向ければ、よく整備されたランニングロードが海岸線に沿ってゆるやかに蛇行し、数百人のジョガーが朝練にいそしんでいるのだ。眼前には陽光を受け眩しくきらめく湘南の海。遠ざかる江ノ島はかすみの彼方、水平線の手前にシャチの背のごとく立つえぼし岩、そして行く手には白富士。まさに永谷園のお茶漬けカードよろしくの東海道五十三次絵巻である。
 当然、口をついて出るのは弥次喜多コンビの膝栗毛の名ゼリフ・・・ではなくサザンオールスターズである。ファーストアルバム「熱い胸さわぎ」から「10ナンバーズ・からっと」「タイニイ・バブルス」「ステレオ太陽族」「NUDE MAN」「綺麗」「人気者でいこう」そして2枚組アルバム「KAMAKURA」へと続く初期サザンの名曲メドレーが脳内ノンストップで流れる。思い出すのは小学・中学・高校時代に、なけなしの小遣いをポケットにしのばせ阿南市役所横のミヤコレコードにLPレコードを買いに出かけた興奮の時だ。マスターCDやダウンロードファイルから違法コピーなどできない牧歌的な時代には、音源を入手するために1カ月の小遣いに匹敵するレコード盤を購入するしかすべはない。払った対価以上に聴き尽くさないともったいないから、レコード盤の溝がすり切れ音が飛びまくるまで何百回となくリプレイした。だから十代の頃に聴いた音楽は身体のすべての細胞まで染み渡り、曲と曲の合間の無音地帯をレコード針がこする音まで記憶している。辻堂、江ノ島、茅ヶ崎、袖ヶ浜・・・地名と風景とサザンが完璧にリンクし、その歌が流れていた時代の青春回想シーンが相まって(その大半は失恋の物語である)、鼻の奥を甘酸っぱくツンと刺激される。まことに悠長な駅伝模倣ランナーである。
 小田原市のメガネスーパー本社前を起点に、いよいよ「山の五区」箱根の登りに突入である。箱根駅伝中もっともドラマチックな場面が生み出される運命の山である。「山の神」と呼ばれた順天大・今井正人が3年続けて逆転劇を演じて見せ、2009年は東洋大の怪物・柏原竜二が今井の記録への挑戦に名乗りを上げた場所である。
 大勢の観光客で賑わう箱根湯本の温泉街を抜けると、坂の傾斜は増し、蛇行する道は妥協なく登りつづける。登山鉄道がスイッチバック方式でしか進めないほどの急傾斜。わかりやすく表現するなら眉山の八万口からの登り坂が15キロ連続しているようなもの。こんな化け物坂を、選手たちはフルスロットルで登り詰めていくのである。テレビ中継の画面からは決して伝わらない極端な傾斜角の険しさを実感できただけでもここまで来た甲斐がある。この五区においてぼくは、「絶対に歩かない」ことを自らに課した。たとえ歩きに等しいスピードまで落ちてしまっても、箱根ランナーの2倍の時間がかかったとしても、やはり走り続けなければ選手の労苦の100分の1もわからない気がするのだ。
 国道1号線の最高地点874メートルの峠を越えると、あとは猛烈な下りに転じる。はるか眼下に芦ノ湖の青い湖面が見える。重いバックパックを背負っているので飛ぶようには走れないが、下り坂は心拍数が上がらないので気持ちよく前進できる。2日後に行われる箱根駅伝を前に、テレビ中継のスタッフが慌ただしく準備に奔走している。彼らに正月はないのだろう。路傍には選手を勇気づける応援のノボリが数百とはためいている。選手より一足先に、その言葉の数々に励まされる役得を享受する。やがて往路のゴールゲートが見える。東京・大手町から108キロ離れた終着地点の眼前には、純白の雪のベールをまとった美しい冬富士が屹立している。ここをゴールと決めていたがもっと走りたい、もっと富士山に近づきたいという欲求を抑えられない。休憩もそこそこに「もっと遠くまで走ってみよう」とバックパックを背負い直す。目的地を定めず、富士の威容がより大きくなる方向へとキックを効かす。峠道をゼエゼエ登り、空中に身体を投げ出すようにスピーディに下り、そしてまたヨタヨタと登る。走る意味を考えながら、自分の行きたい場所はどこかと考えながら、ひたすら走る。
熱砂に汗がしゅみこむのだ サハラマラソン参戦4カ月半前「追い込みの記録1」
文=坂東良晃(タウトク編集人)

(これまで=アフリカ・サハラ砂漠を230キロ走る「世界一過酷なレース」にエントリーしたタウトク編集人。メタボリックかつアラフォーの二重苦をものともせず、ひたすらに走るのだ)
 12月は「もう死ぬー」というくらい自分ってヤツを追い込む、そう決めた。「ここいら辺でちょいと一休みを」と身体が訴えても知らない。ランニング教本に書いてある「適度な休息と回復期を与えることで能力が向上する」との科学的アプローチは完全無視する。
 それくらい追い込まないとサハラに立つ資格を得られないと思う。物事がおもしろいと感じられるかどうかは、1点集中して本気で立ち向かっているかどうかによる。仕事でも道楽でもテキトーに手を抜いて取り組んでも何もおもしろくない。ヒィヒィとノドの奥を鳴らしながら、やれそうにもない事に食らいついていく。そうやってはじめて人生はおもしろみを増していく。

【3日間で2本のフルマラソン】
 12月21日に山口県で行われる防府読売マラソン、その2日後に開かれる兵庫県の加古川マラソンに出場を申し込んだ。中1日をはさんでのフルマラソン2本は、1週間連続で走るサハラマラソンには及ばぬとも、連チャンレースが肉体に与える影響を試すには絶好である。
 防府読売マラソンは実業団の若手選手の試金石といった色合いのある大会。昨年までは制限3時間でファンランナーの出場は望べくもなかったが、今年より4時間に緩和され一般市民ランナーにも間口が広げられた。といってもテレビの生中継が入り、実業団トップクラスの選手が凌ぎを削るという点では、緊張感は失われてはいないだろう。
 冷たい雨が止まぬ曇天のなか会場入りすると、市民マラソンとは別次元の大会であることを実感する。防府市陸上競技場のトラックをウォーミングアップする選手たちのランニングフォームの美しいこと、そして風を切るように走るさま。明らかにキロ3分チョイのペースで走っている。もちろんぼくの全力疾走より早い、早いに決まっとる! 「う、こんな人たちと走るのか。スタート直後に1人置いてけぼりを食らうんちゃうんか」・・・場違いな場所に足を踏み入れた恐怖心か、あるいは極上の美肉を目の前にした高揚感からか(範馬勇次郎が憑依する混乱ぶり)、得体の知れぬ鳥肌を全身におっ立てながらスタート集団の最後尾に並ぶ。
 号砲とともに飛び出せば、かつて経験した事のないハイスピードの群れの中。「行けるところまで行ったる!」とのプランとも言えぬレースプランにしたがいキロ4分45秒平均で進む。10キロを47分、ハーフを1時間44分台で通過。目標である3時間30分切りを充分狙える。けっしてオーバーペースではない。呼吸は深く、グリコーゲンの貯蔵に余裕はあり、気分も平常である。しかしながら12月の雨は体温を著しく下げ、手袋の内側の指先が凍りつくようである。誤って深い水たまりに何度か踏み入れたため、足指先の感覚は痛みからマヒへと移行する。
 30キロ。変化は一瞬のうちにやってきた。予期せぬ客が「来ちゃったの」って感じである。身体のどこにも力が入らない。明瞭であった意識が遠のいていく。自滅の理由は何だろう、と自問自答する。無理なペースではなかった。それなりに自重もしていた。おそらくは悪天時の練習が足りなかったのだろう。雨天練習は欠かさぬもののウインドブレーカーを2重に着こみ、フードを被って、防寒対策をしたうえでだ。レース用の薄いランパン・ランシャツは、ほぼ素っ裸みたいなものである。水しぶきと横風を受けながら2時間、3時間と走った経験は一度もない。「雨の日もヘッチャラ」との根拠なき自信はもろくも崩れ去り、大後悔へと転じる。濡れ雑巾のように重い身体をズルズルとひきずり、制限時間いっぱいでゴールに入った。3時間59分22秒。自分をまったくコントロールできなかった大失敗レースである。真っ黒にとぐろを巻いた雨雲を背後に従えながら、涙目で防府の街をあとにした。

 翌日は全身に重い疲労感があり、朝起き上がるのに困難を極めた。ハムストリングは悲鳴をあげ、ヒザ関節の軟骨はコラーゲンを失いガリゴリ痛み、足の甲の皮膚の内側には甲殻生物がはいずりまわっているような違和感がある。あと24時間で疲労を除去しなくてはならない。超すっぱい「メダリスト」をガブ飲みし、カロリー補給を促すためにセコイヤチョコレートを10本一気食い。酸味と甘みの波状攻撃を受け、胃腸がもんどりを打つ。   
 加古川マラソン当日は午前4時に目が覚める。1時間ほどしか眠れていないが仕方がない。大会前日はこんなものである。問題は別にある。「今から42キロ走るぞ!」と準備体勢に入ろうとする身体を、脳ミソが拒絶している。体温が上がって来ず、たまらなく寒い。うーマジで寒い。さらにわが脳ミソ君は、なるべく走らなくてすむよう理論武装をはじめる。「無理して走ったらヒザ痛が深刻化するのでは?」「こんな状態で完走できるはずない。加古川までの交通費がムダになるのでは?」「そもそも3日で2レースなんてどんな論理的根拠のあるトレーニングなのですか?」。うむ、それぞれ一理ある。いや、一理などない! などと布団の中で2時間もジタバタ葛藤し、最後は「3日に2本に意味などない! あるわけ
ない! やると決めたからやるだけだ!」と暴力的に結論づけて、布団から這い出す。
 フルマラソンを1回走った程度のダメージでネを上げていては、サハラマラソンなんてとてもじゃない。サハラは連日フルマラソン程度の距離を、気温40度、荷物15キロ、足元は砂という劣悪環境の中で1週間休みなく走り続けるのである。とにかく自分に負けてはいけない。スタートラインに着く前にギブアップしているようでは、単なるヘタレである。
 さあジャージを着ろ!乳首にバンドエイドを貼れ!股間にワセリンを濡れ!と命令を下しながら家を飛び出し、夜も明けぬ真っ暗な松茂とくとくターミナルから高速バスに乗りこんだ。高速舞子で降り、JR神戸線の快速電車に乗り換える。加古川駅前のショッピングセンターでウンコを済ませ、大会が用意した無料シャトルバスに乗り河川敷の会場に向かう。松茂から加古川まで高速バス・電車・ウンコの時間を合算しても2時間足らずで到着。加古川ってこんなご近所だったのか。
 防府読売とは異なり会場は市民マラソン大会らしい華やかな雰囲気。スタートラインから数百メートル続くランナーの集団は独特の高揚感と興奮を放っている。走りはじめたものの、やはり脚は重く、ストライドが伸びない。キロ5分30秒で精いっぱい。ジョグ並みのペースなのに、2キロも進めば息は荒く、アゴの先から汗がしたたり落ちる。さらに10キロ手前でヒザ痛が再燃し、エネルギーが枯渇しはじめる。2日前に使い切ったグリコーゲンは当然補充されていない。だけどあきらめるわけにはいかない。我慢だ、とにかく我慢である。
 15キロ地点で大会サイドが用意した「4時間」のナンバーカードをつけたペースメーカーに追いつかれる。ペースメーカーは50人ほどの大集団を引っ張っている。この集団から落ちないように走り切ればいいのだ、と頭を切り換える。ハーフ通過は1時間58分39秒、ボロボロのタイムである。23キロ地点で無性に尿意をもよおす。枯れたエネルギーを補給しようとスポーツドリンクを必要以上にガブ飲みしたためだ。コースを離れ、用を足す間に1分ロスする。「4時間集団」ははるか前方へと走り去ってしまった。追いかけよう。キロ10秒ずつ詰めれば5キロ程度で追いつけるはずだ。ペースを5分10秒まで上げる。しかし集団は遠い。追いつけるようで追いつけない。追いつきたい、どうしても追いつき、追い越したい。食らいつけ、あきらめるな。33キロの折り返し地点を過ぎると強烈な向かい風に襲われる。残り10キロ、身体の疲労感はすでに抜け、足の痛みを感じなくなっている。今の自分ができるベストをしよう。身体に軽さはない。スピードも目いっぱいだ。しかしこれ以上は走れないなんて思うな。今走らずして、いつ走るというのか。今全力を出さずしていつ出すのか。走りにリズムが出てきた。「飛ぶように走れ」と自分を鼓舞する。前のランナーをどんどん追い越していく。向かい風を気持ちよく後ろに置き去りにする。
 ゴール、3時間57分32秒。自慢できるようなタイムではないけれど、初めて納得いく走りができた。自分で自分を認められる走りとは、タイムではなく、むろん順位でもない。どうしようもなく苦しく、心が折れる寸前という場面で、粘って、粘って、耐えきれたかどうかなんだろう、きっと。
 ・・・とレース後、一瞬の満足感にひたったわけだが、2度のフルを走ってみて長ロング走に耐えられる脚が全然できていないのではないか?という疑念が湧き上がった。練習でいくら50キロを走っても現れない疲労感や痛みが本番のレースでは続々と襲ってくる。やはり、疲れがすっかり抜けきった良いコンディションでいくら距離を稼いでも意味がないのではないかと思う。この2本のレースのダメージが回復しきらないうちに更なるロング走を試みるべきだろう。
 仕事が休みに入る年末まで1週間あったので、その間はハーフのタイムトライアルなどを連日行い、「ヘトヘト」の状態をキープした。食事をなるべく採らず、エネルギーの枯渇状態を維持した。そして、かねてからチャレンジしようと企んでいた「1人箱根駅伝」を実行した。

(つづく)
徳島ランキンググルメ発表!タウトク2月号 tautoku0902★人気店の売れてるメニューベスト5★
「何を食べても美味しい」と評判のお店へ入り、いざメニュー表を開く。「どうせならそのお店で一番美味しいといわれるものが食べたーい」という人、タウトク2月号を見て注文の多い人気メニューをチェックしましょう!
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大好評のレギュラーコーナータウトク刑事の拡大版。神山にあるちょっと珍しいメロンパンや不思議フルーツチャンドラポメロなど、読者の素朴な疑問を解決すべく今日もタウトク刑事は徳島中を駆け巡る!

2009年01月15日

幸せのランチタイム、美味しいお店をCU2月号でチェック! tokushima-cu0902.jpg今日のランチは何食べよう? そんな悩める乙女のCU読者のために、今月はランチの大特集。洋食、和食、パスタにお鍋、丼、カレー…。さらにお昼からリッチにコースでいただけるランチ、数量限定や週末だけのお楽しみランチ、本場の料理人の手によるインド料理や中華料理も登場。ページをめくるたびにあれもこれもと想像は膨らみ、「どれも良くって結局決められな〜い」なんて嬉しい悲鳴をもあげちゃうかも!そんなわけで、お昼になるのが待ち遠しくなるような徳島の美味しい最新ランチ、いよいよ発表です。

2009年01月08日

さらら1月8日号で徳島のおもしろいとこ再発見! tokushima-salala0108とくしま生活情報紙さらら1月8日号、特集は「だから徳島はおもしろい」!
今回は県外から徳島に来た人が気になった、徳島のあんなこと、こんなことにクローズアップ!「徳島の車はぞろめナンバーが多い気がする…」という疑問について、車の販売店に直接伺ってみたり、「徳島に来てお寿司に金時豆が入っていたのに驚いた!」というご意見に対して、金時豆入りのお寿司が県内のどこまであるのかを独自に調査し、金時豆入りのお寿司の分布マップを作成したりと、様々な角度から徳島に迫ってみました!ずっと住んでいて“当たり前”になってしまっている、徳島のおもしろさが再発見できちゃうかも。
また2009年のスタートを飾る「嗚呼!さらら番付」は…
不況がなんだ!地味め生活のすすめ!
読者の方から寄せられた不況をぶっとばすアイデアの数々に、驚いたり共感したりすること間違いなし!

2009年01月06日

月刊タウン情報トクシマ12月号 実売部数報告 tautoku0812_busuu.jpg tautoku0812_suii.jpg

月刊タウン情報トクシマ12月号 実売部数報告です。
タウン情報トクシマ12月号の売部数は、
9241部でした。
詳しくは、上部に表記してある画像をクリックしてください。
メディコムでは、自社制作している
「月刊タウン情報トクシマ」「月刊タウン情報CU*」「結婚しちゃお!」
の実売部数を発表しております。